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従来の日本国内では、会社員の「精力分散防止義務」「職務専念義務」が重視され、副業はご法度とされていました。副業が見つかればその従業員に対して懲戒処分を課す例は、今でも少なくありません。一方で、副業を解禁する企業も増加しています。その背景には何があり、副業を認めるにあたって、どのようなしくみを社内で整備すべきなのでしょうか。
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副業導入の背景
今でも多くの企業で、従業員の副業・兼業は認められていませんが、じつは、副業や兼業を禁止する法規制は存在しません。国民には職業選択の自由が保障されているため、本業の労働時間以外の時間をどう使おうが自由です。したがって本来、本業とは別の仕事を並行的に行うこと自体が違法となることはありません。ただ、就業規則などの内部ルールで、副業・兼業を禁じているのです。
昭和の高度経済成長やバブル景気の頃とは、会社員の待遇を取り巻く環境は大きく変わっており、勤続していれば年功序列で地位や給与が上がっていき、終身雇用で定年まで勤められると誰もが期待できる時代ではなくなっています。むしろ給与水準は低下傾向にあり、会社がすべての従業員の人生を丸抱えして保証する余裕なんてありません。
そこで、会社も従業員の副業・兼業を原則として許可することで、モチベーションを維持し、離職・転職を未然に防ごうとしているのです。
副業のメリット、デメリット
副業を認めることによって、従業員にとっては収入にゆとりが生まれる可能性がありますが、企業にもメリットがあります。
たとえば、従業員が社内で得られない知識やスキル、人脈などを、社外(副業先)から獲得するチャンスになりえます。副業で得られた資源を本業にもフィードバックでき、事業の拡大に繋がる可能性があるのです。
また、副業を認めることは、従業員にとって有利に作用する労働条件となりますので、優秀な人材を獲得したり、流出を阻んだりする決め手ともなるでしょう。
さらには、副業にどのような職業を選ぶのか、あるいはプライベート時間に起業して(会社設立やフリーランスなど)自分自身で稼ぎ出す経験を積ませることで、労働者の自主性を促すことができます。単なる指示待ちで責任感の薄い人材を減らすことができるかもしれません。
ただし、副業を認めることにはデメリットもあります。働き過ぎによって健康を害したり、慢性疲労や睡眠不足に陥ったりするおそれがあります。ひいては、本業がおそろかになってしまうので、副業を原則禁止としている企業が多いのです。
また、副業先へ顧客情報や営業機密情報が漏洩してしまうおそれがあることや、本業と同業種の副業を許すと、競業や利益相反によって会社の社会的評判に傷が付くリスクがありうることなども、副業・兼業を禁止する理由として挙げられます。
ただし、労働契約は、企業と労働者の間で長期間にわたって継続する契約であり、両者の信頼関係が主軸となります。よって、労働の品質に支障を来さず、信頼関係が破壊されないかたちなら、副業は認められる余地があるのです。
過去の裁判例などに照らしても、就業規則の副業禁止規定に違反していることをもって、懲戒解雇処分を課す会社の判断はことごとく無効とされています(国際タクシー事件/福岡地裁1984年1月20日判決、定森紙業事件/大阪地方裁判所1989年6月28日判決、十和田運輸事件/東京地方裁判所2001年6月5日判決など)。
これらは比較的古い裁判例ですので、現在では解雇ほどではない懲戒処分でも無効となる可能性もあるでしょう。各企業の業務の性質に照らして、どうしても副業を禁じなければならない事情でもない限り、原則として副業・兼業を認める方向で運用することを検討すべきです。
副業を導入する際確認すべき社内制度
すでに述べましたとおり、副業にはいくつかのデメリットがあります。そのデメリットが生じて会社が損害を被るリスクを事前に軽減、あるいは排除することさえできれば、副業は認められるべきなのです。
よって、副業を希望する従業員は、直属の上司か人事セクションによる「事前の承認」か「事後の届出」をさせるようにすると合理的です。
自社の事業と利益相反関係になりうる競業に該当しないか、自社の重要な機密が副業先などに漏れるおそれはないか、長時間労働を招いて従業員の疲労を蓄積させ、労働の品質低下や健康状態の悪化に繋がるおそれはないか、などといった可能性について、副業先の契約書や自己申告などでチェックするようにします。
そして、必要があれば時間外労働(残業や休日出勤)の免除や抑制を行い、副業が加わることによる労働負担が重くなりすぎないようにします。
時間外労働の割増し賃金規定は、本業と副業で合算して考えます。たとえば、本業で、月曜から金曜まで週5日、1日8時間の所定労働時間とされ、土曜に副業として週1日、4時間の所定労働時間でアルバイトをするとき、いずれも所定労働時間に沿った勤務を行ったとしても、全体として観察したとき、労働時間は週44時間となります。つまり、土曜の副業は時間外労働に該当するため、副業先企業は割増し賃金を支払う法的義務を負いますのでご注意ください。
ただし、副業は従業員の労働時間外における行動に該当します。よって、過度の干渉にならないよう、副業に関する情報を必要以上に根掘り葉掘り調査することは避けるようにします。
また、副業を許可した後も、定期的に状況を聞き取るなどして、従業員の健康状態を点検することも重要となります。さらに、副業が主要原因で業務に支障を来していないかどうか、直属の上司に聞き取ることも大切です。
一連の労働保険の運用にも注意しましょう。従業員が副業をしていても、会社は労災保険に引き続き加入しなければなりません。もちろん、副業先で労災が発生した場合には、副業先が加入している労災保険が適用されます(副業先にも雇用されている場合)。
ただし、本業先から副業先へ移動するとき、あるいは副業先から本業先へ戻るときに、労働者が負傷した場合には、通勤災害と見なされ、やはり労災保険給付の対象となります。
雇用保険においては、同時に複数の会社に雇用されている人であれば、それぞれの雇用関係において被保険者要件を満たす場合、その人が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となります。つまり、副業の収入が本業を超えるような状況でもない限り、本業で雇用保険に加入していれば十分となるのです。
厚生年金、あるいは健康保険(協会けんぽや組合健保など会社が保険料を納めるもの)の場合には、同時に複数の会社に雇用されている人であれば、会社ごとに適用要件を判断します。つまり、複数の会社で労働時間を合算したときに適用要件を満たすとしても、各社ごとで適用要件を満たしていないのなら、厚生年金や健康保険(協会けんぽや組合健保など)は適用されません。その場合は、国民年金や国民健康保険の加入となります。
まとめ
かつて、日本の高度経済成長を支えてきた終身雇用や年功序列といった制度は、ほとんど崩れてしまっている昨今です。よって、かつては禁止が原則だった副業や兼業も、認められる方向に舵を切っています。そもそも、副業は法的に自由なのが原則なので、副業を禁止するには会社にとっての被害や従業員の健康被害のリスクなど、合理的な理由がなければなりません。そのため、副業の内容などを事前申請や事後届出でチェックするようにしましょう。
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