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今回は株式会社プレイドの執行役員CFO 武藤健太郎氏をゲストに迎え、前半では、外資金融からスタートアップCFOに至るまでのキャリア、投資側からプレイドのCFOという事業の当事者になって経験したことを伺いました。更に後半では、プレイドが人材に求めることから経営管理部門で活躍には何が必要なのかを伺っています。
インタビュアーは、管理部門・士業のキャリア支援に強い株式会社MS-Japanの執行役員 清水悠太が行いました。
――(清水)まず、武藤さんは東京大学の工学部を卒業されてから、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入社して経験を積まれ、その後ドイツ証券に入られたと伺いましたが、もともと金融業界に興味をお持ちだったのでしょうか?
いいえ、大学ではとにかく理系一辺倒で、応用化学科で液晶の研究なんかを夢中でやっていました。卒業後は一転して、いろいろな企業を見てみたいという思いが強く「Banker(バンカー)」という仕事に興味を持ち日本長期信用銀行に就職しました。
ところが1998年に日本長期信用銀行がバブル崩壊後の不況で不良債権を抱えた影響で経営破綻しまして、そこから外資系金融のドイチェ・アセット・マネジメントに転職し、そこでは主に資産運用の経験を積みました。その後、縁あってドイツ証券の投資銀行部門に移り、本来やりたかった資金調達支援やM&Aアドバイザリーなど投資銀行業務に携わりました。結局、ドイツ証券には15~16年ほど勤め、その間に見聞を広げたいという考えで、30代前半にコーネル大学のMBA留学も経験しました。理系出身だったので、数字を分析することに苦はなく、分析結果からモデルを作って予測するといったことをやっていました。
――(清水)理系出身という特徴を活かしてドイツ証券でご活躍されたんですね。その後、現職のプレイドに入社されるまではどのようなご経験を積まれていますか?
ドイツ証券の後は、BDAパートナーズでM&Aアドバイザリーを経験した後、スタートアップでのキャリアに興味を持ちヘルスケアベンチャーのFiNC Technologiesに転職しました。初めてのスタートアップでしたが、プロフェッショナルファームとして企業にアドバイスする側から事業当事者側になり、良い経験が積めました。
その後、再度金融業界に戻り、みずほ証券の投資銀行本部でファンドのIPO案件を経験したり、スタンダード・チャータード銀行ではM&Aチームの立ち上げを経験したりしました。
その後、現在のプレイドに転職しています。
――(清水)金融業界に戻られてM&Aチームの立ち上げなど、組織の中核人材として順風満帆なキャリアになっていると思いますが、改めてベンチャーに転職したのは何故ですか?
金融の仕事自体には面白みがあったのですが、既に出来上がった組織、ルールの下で仕事をすることに徐々に魅力を感じられなくなっていて、新しい経験・体験をしたいという気持ちが強くなっていました。
――(清水)投資側で様々な企業を見てきたご経験があり、ベンチャーの当事者側も経験されている中で、プレイドを選んだポイントは何ですか?
ドイツ証券の投資銀行部門に入社するときに「法律に則っている限り、何をしても収益をあげれば良い」とその時の上司に言われた言葉を今でも覚えています。それぐらい、何をどう提供するか、例えば海外M&Aのアドバイスなのか、リストラクチャリングのための資金調達なのか、については裁量を与えられていました。一方で、過去在籍したベンチャーでは、経営レベルで参画したのに、そのような創意工夫の余地がない職場もありました。
そんな時に大学の同期からプレイドの社長である倉橋を紹介してもらいました。倉橋と話す中で、プレイドは自主性を重んじ、リーダーシップのある人材には大きな裁量を渡すんだという組織の価値観があると感じました。
その上で、特に決め手になったのは、ベンチャー企業であってもこれまで金融機関での経験や強みを活かしたいので、事業の成長性や社長が描いているビジョンのスケールが大きいスタートアップが良いと考えていたことです。そういった企業であれば、いろいろな意味で資金調達やM&Aなど事業を大きく成長させる経験を持ったCFOが必要になると考えていました。
この点で、私にとってプレイドの事業は非常に魅力的で、将来性を感じました。実際に入社してから最初のミッションはIPOでしたが、当初の予定から時期変更に加えて、グローバルオファリングに挑戦するなど非常にやりがいのある経験が積めました。
――(清水)プレイドのIPOの軌跡については、武藤さんを含め管理部門メンバーの皆さんがnoteで記事になっているものを拝見しました。実体験に基づいた貴重な内容なのでぜひ読んでいただきたいですね。
IPOはプロセスであってゴールではないので、状況に応じて変更や延期はあるものと思いますが、さすがに複数回延期をするとは思っていませんでした。ただ、その過程で多くの学びが私自身にあったのと、メンバーも成長したので私や代表の倉橋だけでなく、実務担当のメンバーにも記事を書いてもらうことにしました。
失敗談を含め多くの学びがあったので、これからIPOを目指すスタートアップベンチャーのお役に立てればと思っています。
――(清水)noteを読んでも感じましたが、プレイドの管理部門は自社サービスや事業の成長に対するコミットが強いと思います。武藤さんはどのように捉えていますか?
プレイドでは管理部門を「アクセラレーター」と呼んでいます。これは管理部門を単に「経営管理」をする部署や人材と考えるのではなく、事業を加速させる存在と考えているためです。もちろん、上場企業として必要な管理は十分に行いつつ、更に事業の成長を加速させするためにアクセルを踏み込んで、組織を走らせる役割も担うイメージですね。
元々社風として「常識を疑う」という価値観を共有できていることに加えて、IPO準備やその中でグローバルオファリングに挑戦したことは、管理部門がアクセラレーターであるということを実体験するのに良い機会でした。
――(清水)グローバルオファリングでのIPOは、プレイドと会社が持つ価値観を表す一つだったと思いますが、実際に上場して感じることはありますか?
弊社の株主の中で比率が高い海外投資家から期待されること、求められることについて、国内投資家との違いを感じました。現在は市場環境が変化しているものの、プレイドがIPO準備を進めていた2019−2020年の頃は、IPOをした多くの上場企業が利益を出すことを期待されるのに対して、弊社株主の海外投資家は利益を出すことを望みませんでした。短期的に利益を出すことよりも、より積極的なプロダクト開発や人材採用、マーケティングへの投資が求められましたす。最近は市場の潮目が変わり、海外投資家も成長と収益性のバランスを求める姿勢に変わりつつあるものの、本質的に短期的な利益よりも、中長期的に事業規模を拡大できるかどうかを重視する海外投資家の姿勢は変わっていないと思っています。
この点は、SaaSのプロダクトを扱うベンチャーとして、やりがいがあると感じています。
弊社が開発しているKARTE(カルテ)は、まだまだ発展途上のプロダクトなので、オーガニックな成長、すなわち連続的な成長はもちろんのこと、インオーガニックな非連続での成長に向けて、現在の事業やプロダクトとシナジーのある新しい領域に広げることも必要です。
実際にM&Aで、エモーションテックという企業がプレイドグループに加わったことで、メインプロダクトの「KARTE」に新しい価値を付加できるようになりました。
――(清水)これからが非常に楽しみですね。人材採用も積極的に行っていらっしゃるかと存じますが、どんな人材に参画して欲しいと考えていますか?
多様な経験・経歴を持ったメンバーに入って欲しいですね。そのためには、皆さんそれぞれに何が自分の強みなのか、個性なのかを考えていただくと良いと思います。一方で経験に基づく専門性に固執したり、担当業務に執着したりするのではなく、自分と違う物事に興味を持って受け入れられる方だとより良いですね。個性のあるメンバーが良い形で、価値を発揮できる組織にしていきたいと考えています。
私も今年50代になるという年齢を考えると、そろそろ後進の育成に専念しようなんて考えることもあります。…まあ、半分は冗談ですが(笑)
でも、実はまだまだやりたいことはあるし、組織としても、もっとメンバーの強みを活かせる仕組みを作っていきたいです。それに応えてくれる、個性的な人材に来てほしいですね。
私自身も積極的に新しいことを学んで、ビジネス界全体にファイナンスやCFOの仕事を広めたいです。
――(清水)では最後に、Manegyの「CFOインタビュー」読者の皆様に、管理部門で活躍できる人材になっていくために必要なことをアドバイスいただけますか?
私自身が心がけていることをお伝えできればと思います。私は過去の経験を活かしつつも、それに縛られないように、またCFOの肩書に縛られないように、広い視野で物事を見ています。それでも当社CEOの倉橋と話をしていると、彼はもっと幅広くいろいろな視点から見てるんですよね。ああ、こんな見方ができるんだって。
その時に、より高い経営判断をしている会社や事業、組織を考えること、自分とは違った視点から物事を捉えることが大切だなと思います。そのために「アンラーニング」ということを意識すると良いと思います。常識を疑ってみることや、一秒前の自分を否定してより正しい答えや新しいことに挑戦してみる思考法や行動力を養っておくと良いと思います。
――以上になります。本日はありがとうございました。
より良い顧客体験価値の実現に向けて、CXプラットフォーム「KARTE」をWebサイトやアプリはじめとしてあらゆる顧客接点において提供するプレイド社CFO武藤さんのお話しをお伺いし、経営管理部門に求められる価値も変わってきていることを感じることができました。
これまで事業を成長、加速させるのは、主にプロダクト開発やセールスの役割でしたが。しかし今後は経営管理部門がいかに効率的に、そしてより効果的にオーガニックな成長を促すのか、またインオーガニックな成長に貢献するのかが求められています。
その期待に応えるためには、管理部門こそアンラーニングをして、これまでの常識にとらわれず、変化・行動していくことが重要です。
<プロフィール>
武藤 健太郎(むとう けんたろう)/ 株式会社プレイド 執行役員 CFO
東京大学工学部卒業。
コーネル大学ジョンソンスクールオブマネジメント修了(MBA)。
日本長期信用銀行(現・新生銀行)、ドイツ証券、BDAパートナーズで金融工学研究、金融商品開発、資金調達支援、M&Aアドバイザリーを経験。その後、スタートアップベンチャーのFiNC Technologiesを経て金融業界に戻りみずほ証券投資銀行本部、スタンダード・チャータード銀行東京支店を経験。
現在は株式会社プレイドのCFOを務める。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division/執行役員
2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。
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