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デジタルトランスフォーメーション(DX)市場は、2030年度には5兆円規模まで成長する一方、企業のDXを担う人材不足が課題となっています。そういった市場に対して技術と人材の両面から支援している株式会社グローバルウェイ。
今回のインタビューでは、上場後、更に大きな事業成長を目指す同社の取締役CFOに就任した新井普之氏を取り上げます。
大学卒業後、同社に参画するまでさまざまなベンチャーを渡り歩いてきた新井氏。今回はその波乱万丈なキャリアから得た仕事観やこれから経営管理部門で活躍する人材に求められることについて伺いました。
管理部門の管理職やCFO等の経営層を目指す人のキャリア形成にお役立ていただける内容です。
(清水)
はじめに新井さんのご経歴を教えていただけますか? 大学ではラグビーに熱中した日々を送っていらしたと聞いています。
(新井氏)
高校(早稲田大学高等学院)、大学(早稲田大学)とラグビーに打ち込んでいましたね。高校の時には、東京都大会の決勝まで行きました。そのまま大学でもラグビー部に入部してラグビーと勉強を両立させる生活をしていたので、月曜しか休みが無く、ゼミを選ぶときに唯一入れたのが金融論ゼミでした。それしかなかったとはいえ、金融には何となく興味を持っていました。実は小学生の頃にシンガポールに住んでいて、そこでビルや地下鉄ができる経済発展を見てきて、そこに金融機関や商社が関わっていること知り、自分自身もプロジェクトファイナンスでアジアの経済発展に貢献したいと思っていましたね。
(清水)
それで卒業後は金融機関へ。プロジェクトファイナンスを担当されたのですか?
(新井氏)
そのつもりだったのですが、一般的な大手金融機関の新卒総合職採用だったので、すぐにはプロジェクトファイナンスには関われませんでした。三和銀行(現在の三菱UFJ銀行)の八王子支店で企業向けの融資を担当していました。
当時は、ちょうど世間で貸し渋りが問題になった頃で、業績が良いところにはどんどん貸すけれど、業績が悪くなると途端に回収を始めるというのは、まさに当事者として経験しました。正直、銀行でやりたかったことってこれだったのかな?と思いました。その後本部に移り、為替や債券売買のバックオフィスを経験しました。
(清水)
その反動もあって、次は外資系投資銀行だったんですね!具体的にやりたかったことは何ですか?
(新井氏)
もともとプロジェクトファイナンスに興味があって、社会や企業の成長に貢献したいと考えていたので、その一つとしてM&Aをやりたいと思うようになり、外資系投資銀行に転職しました。ただ、実際には、毎日資料作りばかりでなかなか実務に携われない。実はここから数社、外資とベンチャーを渡り歩くことになります。
外資系の情報通信企業にいたころ、銀行時代の同期がいろいろなところで活躍し始めていて、私も焦りを感じて何か状況を変えたいと思い、働きながらグロービス(グロービス経営大学院)に通い始めたのがこのころでした。これが、ベンチャー企業のキャリアに繋がっていきます。
グロービスでケーススタディーなどをやっているうちに、企業の中で意思決定に携わっていきたいと思い始めましたのです。そうなると、当時の自分のスキルや経歴で経営幹部を目指す早道は、ベンチャー企業だと思い、興味が出てきたという感じですね。
(清水)
なるほど。ビジネススクールでベンチャーへの興味が湧いたのですね? 他にも転機となった出来事はあったのですか?
(新井氏)
IPO直後の不動産金融ベンチャーに転職したのですが、ここで幅広い実務をできたことが大きかったですね。ここの上司がとても優秀で、社長と専務がボストンコンサルティングの出身の厳しい人たちで、求められるアウトプットの質もスピードも非常に高く、すごく鍛えられました。それに、上司がハードワークに慣れているので、ついていくのが大変でした。担当という点では経営企画だったのですが、経営管理から中期経営計画、予算計画・管理、開示、IR、資金調達、法務まで、とにかく発生する業務は何でもやりました。ここで経験したマルチタスクが、間違いなく私のCFOのスタイルの基礎になっていますね。この企業はサブプライムローンの影響で破産したのですが、破産後にマルチタスクの仕上げじゃないですが、破産管財人の弁護士にアルバイト採用してもらって破産処理まで経験しました。
(清水)
一社員ですよね? 破産処理まで対応する責任ってあったんですか?
(新井氏)
仰る通りで対応の必要もなく、むしろ転職活動しなければいけなかったんですが、一方で破産処理なんてめったに経験できない。血肉になるだろう、やってみたい!って思ってしまったんです。何でも自分でやってみたい、体験してみたい性格なんです(笑)。
(清水)
破産処理を終えて、その後「みんなのウェディング」に転職されていますが、ここではTOBの経験をされていますね。
(新井氏)
クックパッドとのTOBですね。知人の紹介でみんなのウェディングに入社し、しばらくしてCFOとして経営に参画しIPOをしたのですが、上場後、クックパッドからのTOB提案があって連結子会社になりました。一般的にはこういった場合、役員は退職勧奨されることが多いので、私も辞めることになるんだろうなと思っていましたし、実際そう言われました。しかし、TOBの対応や引継ぎまでの仕事に取り組む姿勢などを評価してもらい、後任のCFOから役員からは外れてもらうが、経理部長として残って欲しいと言って貰えました。一旦は断りましたが、残留を求められたのは能力を認められた感じがして嬉しかったですね。その後3年程度はみんなのウェディングに残り、オウチーノとみんなのウェディングの統合(共同株式移転)までやって、ALBERT(アルベルト)に転職しました。
ALBERTに入社後、執行役員CFOとなり、経理や経営管理、IR、人事の体制、採用まで管理部門全体の立て直しをやりました。上場企業といっても意外と管理体制が未整備な企業はあるんだなと感じました。一方で、上場したからには事業成長し続ける必要があるので、内部の体制整備をする守りと並行して、社長からは事業成長面でのテコ入れ、攻めも期待されていました。案件受注を安定化するための資本業務提携を推進し、最終的に4社ほどとの提携に携わり事業基盤を整えて退職しました。そうしたらちょうどコロナ禍になってしまったので、まぁしばらくは充電期間にしようと思って2年間ほど遊んでいました(笑)。
(清水)
唐突ですね(笑)。 2年ブランクに不安はなかったですか?
(新井氏)
コロナ禍でしたしね。焦っても仕方ないなと、家事や子供の受験のサポートをやっていました。やってきたことに自信があったというか、基本的にポジティブな性格なので、落ち着いたらまたどこからか声がかかるだろうと思ってました。
結局、大学の先輩から大阪の会社の管理部門の立て直しのスポット案件の紹介をいただき、現職グローバルウェイのCFOの声がけを同時にいただき復職しました。現職も、前任CFOに指名いただきました。
(清水)
現職のグローバルウェイに参画を決めたポイントは何ですか?
(新井氏)
グローバルウェイの魅力は、市場の拡大が予測されている一方で担い手不足が課題となっているDX市場に対して技術と人材の両面からサービスを提供しているところで、ポテンシャルがあることです。ご存知の通り、DX化を課題とする企業は多く、それに対応したサービスもたくさんあります。しかし、実際にそれを推進して、活用できる状態にする人材が不足しています。一方で、当社はそれを十分に支援できる優秀なエンジニアをしっかりと確保できています。今後も市場は拡大し、人材不足は加速するので、当社には成長余地が非常に大きいと考えています。また、第2創業期を迎えて事業拡大をしていく中で、管理部門も整えていきたいという社長の意向があり、自分の経験を活かして貢献できると思い参画を決めました。
(清水)
グローバルウェイでの課題は何でしょうか? また、ここを伸ばしていこう!というような目標はありますか?
(新井氏)
課題、つまりポテンシャルだらけですね(笑)。課題の洗い出しをしながら、主要なところから早速改善を始めています。まずは業務の取捨選択と効率化。新しいことを始めるには、捨てる業務も必要で、今のタスクをこなしていくだけでは売上目標を達成できません。
前期は売上高18億円を5つの事業で作り出しました。単純に割ると一つの事業で3.6億円。実はまだまだどれも小粒な事業と考えています。それぞれの事業に、まだ伸びしろがあります。中期的な目標は売上18億円を2026年には47億円、2.5倍に設定しています。
そのためには管理部門が事務屋でいちゃダメです。たとえば人事なら、その規模になるためには、どんな人材が必要で、そういった人材を定着させるためには、どんな制度や評価が必要かを考えて、先手を打つ必要があります。昨今の人材採用は容易ではないので、採用パイプラインをどう構築して、人材ポートフォリオはどうするのかとか、全力で考える必要あります。経理であれば、ただ単に仕訳をすれば良いのではなく、月次決算の早期化を図って、なおかつ経営に必要なアウトプットが必要です。管理部門でも事業成長を常に頭に置いておかないといけません。その前段階として、まずは捨てる業務と効率化する業務を決めていきたいと思っています。
また売上47億円をやるためには何が必要かを管理部門の一人ひとりが考えられる組織にしたい。そのためにも、定型業務はAI活用やシステム化で徹底的に効率化して、創造的な業務に管理部門のメンバーが従事できるようにしたいです。
(清水)
まさにこれから管理部門が面白くなるところですね! 同様に成長・変化のフェーズにある企業は多いと思いますが、そのような企業の管理部門で活躍するためにはどのような能力が必要ですか?
(新井氏)
一番大事なことは、「事業を理解できる人材」になることですね。管理部門は専門知識や実務スキルに傾倒しがちです。当然それも必要ですが、そこを突き詰めてもオペレーターになってしまいます。管理部門であっても、事業成長にどう貢献するのかというマインドが大切。次に大切なのは、客観的に数字をちゃんと見られること。経営判断の根幹を担う数字を、主観を排して客観的に冷静に見て、そこから浮かび上がってくる会社の状況を正確に把握して、課題解決に繋げるのが管理部門の役割です。定量・定性両方分かることが必要です。
管理部門においてはスキルの深掘りも大事ですが、それだけでは、トップレイヤーのマネジメント職やCFOなど経営幹部にはなれません。専門的な知識を武器にするために、資格を取ることを否定はしませんが、その知識を活かすためにも、横断的に、そして網羅的に事業を見られないとダメだと思います。
私の場合、自分が既に知識をもっていても、一旦ゼロベースにして考え直す、学び直すことを心がけています。自分で一度作り上げた枠から出られないことは、もの凄いスピードで変化する時代においてはマイナスになります。アンラーニングというか、過去を否定して新しいことを吸収する資質が大事です。
(清水)
最後に、新井さんのこれからのキャリアはどうなっていくのでしょうか?
(新井氏)
お話しして来た通り、変化が無く安定したところにいるのは苦手です。むしろ課題が山積していたり、ハードな出来事が起きたりしてバタバタした状況で活きます。管理部門が機能するようにして、そこから事業成長を加速させることはとても楽しいです。しばらくキャリアチェンジするつもりはないので、マルチタスクに対応するCFOで頑張ります(笑)。また身につけてきたノウハウを次の世代に引き継いでいきたいです。
会社の姿は数字に表れます。数字の裏側にある会社の行動を捉えて、これからどうすればよいのかを提言できるのがCFOだと思います。会社のためにできることを、ずっとやっていきたいと思います。
―以上になります。本日はありがとうございました。
「人生に無駄なことはなにひとつない」とはよくいわれることですが、新井氏の経歴はまさにその言葉通り。金融機関からベンチャー、IPOから(勤務先の)破産処理、TOB、2年間の充電期間まで、すべてが新井氏の知識と経験になっているのでしょう。もともとのポジティブな性格に加えて、業務範囲を規定せずにマルチタスクに対応すること、常にアンラーニングして過去を否定することで、どんな状況でも解決策を見出す、頼れるCFO像をみることができました。
新井 普之(あらい ひろゆき)/株式会社グローバルウェイ 取締役CFO
早稲田大学卒業後、メガバンクにて法人営業を担当。その後、外資系投資銀行やベンチャー企業数社にて、経営企画や管理部門全般に貢献。IPOや企業再生、破産処理、M&Aや資本業務提携などを幅広く経験した。コーポレート部門の幅広い領域に知見があり、それが余人にはない強みとなっている。
2022年5月に、株式会社グローバルウェイ コーポレートサービス本部長に就任。同年6月には取締役CFOに就任した(現任)。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division/執行役員
2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。
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