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Webシステム開発やECサイト構築、スマホアプリ開発、マーケティング支援などの「WEBソリューション事業」と、スマホゲーム開発などの「オンラインゲーム事業」を展開する株式会社アピリッツ。
同社は2021年2月、東京証券取引所JASDAQへと上場を果たしました(市場区分見直しにより、現在はスタンダード市場に上場)。
今回は同社の取締役執行役員CFOの永山亨氏に同社に参画されるまでの経緯、CFOや経営層を目指す人が大切にしなければならない考え方などについて伺いました。
――(清水)まずは永山さんのご経歴を伺います。 新卒で鉄道グループ会社に就職されたようですが、やはり昔から鉄道好きだったんですか?
新卒入社したのは、鉄道業界に限らず巨大なグループ企業経営をしていた、業界大手の西武鉄道グループでしたが、実は鉄道に興味は無かったのです。
単純に通勤の満員電車が嫌で、下り方向にある企業が良いなと考えていて、その中でも倒産する可能性の低い大手企業グループを探していたところ、なんと所沢に本社のある西武鉄道を見つけてしまい、「ここだ!」ということで決めました(笑)。
当時の西部鉄道は、グループ会社含め新卒を一括採用していて、入社して最初は会社に関わらず全員、駅員の研修からスタートします。特に鉄道好きではありませんでしたが、私も多分に漏れず、駅員をしていました。そして、そのあとは何故か経理部門に配属されました。
大学の学部は経済学部だったので、いわゆる経理や会計の基礎はなく、経理部門に配属されて一から学んだという感じですね。
――(清水)完全に安定志向の学生だったんですね? 今の永山さんとはだいぶ違うように思いますが。
そうですね。安定を求めて入社しましたが、実はそれが転職に繋がるという結果になりました。新卒一括採用で終身雇用を前提としている会社だったので、社員はゼネラリストに育てていく方針でした。そのため、各部署を定期的に転々として、浅く広く経験を積んでいくことになります。
正直、経理が自分に向いているとも思っていませんでしたが、軸となる経験を積む前に部署異動をすることはわかっていたので、このままでは全部半人前で、いわゆる強みとしてのキャリア形成ができないと思いました。それで思い切って辞めました。そして、1年間、世界中をバックパッカーで旅していました。
――(清水)え? 退職していきなりバックパッカーですか? コアキャリアを作るため転職ではなかったんですね。ずいぶん思い切った方向転換ですね。
はい。社会人になってから、改めていろいろな国行ってみたいという思いが強くなり、行くなら退職した今しかないと思いました。それで、1年はバックパッカーで過ごしましたが、さすがにそれ以上となるとキャリアにも影響すると思っていたところに、縁あって知り合いから声をかけられて2社目のメンバーズに入社しました。
西武鉄道グループでは、広く浅くの経験だったので、直近までやっていて一番経験年数も長かった経理の仕事を任せてもらいました。ここではじめて、経理をコアなスキルにしたいと考えていました。ところが前職で幅広く何でもやっていたためか、それともこれがベンチャー企業なのか、経理業務に加えてISMSの申請や事務所の移転など、全社的なプロジェクトにアサインされるようになっていきました。このままでは、30歳前後までに強みと言えるスキルが身につかないと感じるようになり、やむなく退職することにしました。
――(清水)ここまでは、ごく普通の悩める経理人材といった印象ですね。 転職したけど、期待したキャリアアップができず、徐々に選択肢が無くなっていく方はよくいます。
そうですね。そんな中で、次こそは経理として専門性を身に着けたいと考えて、マザーズに上場したてのディップに転職しました。ここで上場企業の経理経験をしっかりと身に着けて、自分も一流の経理パーソンになるぞと意気込んでいました。ところが、当時は上場達成したばかりで、実は内部の体制はまだまだ整える必要があり、いわゆるベンチャー企業でした(笑)。
ここで改めて同じ上場企業でも、歴史ある西武鉄道グループと上場したばかりの企業では、全然違うということを実感しました。
上場企業で会社の中身ができていない会社は意外にもたくさんあります。業務フローは整っていないし、必要な業務ツールがそろっているわけでもない、やることは山ほどあります。
そもそも、事業を更に成長させるために上場するので、上場直後の企業は発展途上なんだということを実感できました。一方で、上場したからには、パブリックカンパニーとしての責任を果たす必要があります。成長しながら、企業としての安定性も整えていくことが求められます。
結果、ディップには11年間在籍していましたが、経理部門には7年在籍して、最終的には経理部長になりました。
経理では主計、財務、開示、システムの入れ替えまで、あらゆることができたので、部分的な経理の専門スキルや知識を身に着けることよりも、全社的な仕組みを作り上げることに多くの時間を割きました。これは自分の適性にもあっていて、とても充実していましたね。
結局、その仕事ぶりや社内のキーパーソンとのコミュニケーションが取れることを評価いただき、経営企画に異動しました。組織が大きくなり、グループ会社も増えていく状況で、経営企画は社内のキーパーソンとの折衝が多く、各部門の意向をくみ取りつつ、全社的な方針も実現する必要があり、折衝力が求められる仕事でした。
――(清水)徐々に今の永山さんのイメージに近づいてきました。マザーズから一部上場の指定替えにも参画されましたか?
はい。私が経営企画に異動した時期に、ちょうどマザーズから一部への指定替えを検討している最中でした。経営企画として審査対応の中心メンバーになり、指定替えに関わることができました。
主幹事会社との調整や東証の審査を通して、ここで数字に関わることはすべて経験できたという感じです。
結局、過去何度かチャレンジすることになり、三度目の正直のこの回で指定替えを成功。 当時は、社員は1,500人になって、時価総額もかなり大きくなっていました。上場直後のバタバタしている未整備な環境から、一部上場まで経験して、このままディップにいてもよかったのですが、こころのどこかで、まだ世に知られていない未上場の会社が上場するのを見たい。その成長に自分も貢献したいと感じていました。
ディップでの経験が、良い意味で自信になり、組織の規模が小さく、自分の影響力が高い環境、裏を返せば自分の責任が重い環境にチャレンジしてみたかったのです。
――(清水)そこで参画されたのが、クリエイターズマッチさんだったんですね。
はい。クリエイターズマッチには、CFOとして参画して、期待されていたのはまさに上場でした。
クリエイターズマッチはディップとは違い、メンバーも少なく改善する領域も広かったので、まさに理想的でした。これまでの経験が活かせる上に、役員として新しい知見がずいぶんと広がりました。入社当時が、ちょうど主幹事会社や監査法人を選定しはじめたところで、労務管理や管理会計の課題を指摘されていて、数字以外のことでやることが山ほどありました。
ただ、経営管理体制の整備は順調に進んでいたのですが、事業構造の課題から予実にずれが生じはじめてしまい、一旦、上場の時期を見直すことになってしまいました。
――(清水)その状況ですと、当面の間は上場要員のCFOは企業に貢献し辛くなりますね。それがアピリッツさんに参画するきっかけとなったのですか?
そうですね。以前在籍していたディップの社外取締役が私の状況を知って、紹介いただいたのがアピリッツでした。実はその方が、アピリッツの社外取締役を務めていて、上場準備に私が使えると思っていただけたようです(笑)。
話を聞くうち、ディップとクリエイターズマッチの経験からアピリッツが上場する確度は高いと思いました。何ができていないと上場は難しいかということは、ディップとクリエイターズマッチでイメージできていて、両社での経験が非常に役に立ちました。
――(清水)アピリッツさんは2021年、JASDAQに上場されますがそれはスムーズに?
そうですね。できていないところもありましたけど、やるべきことがはっきりしていたことに加えて、経験・知識は不足しているものの幸い必要な経営管理の人数がそろっていました。この点は大きかったです。私はメンバーに上場基準で物事を考えさせる点に集中することができ、スムーズにIPOを進められたと思っています。
――(清水)上場後、アピリッツさんはどのように変わっていかれるのでしょうか?
まだ事業規模が小さいので、売上等の事業規模の桁を上げていくことを考えています。
当社は開発が主体の会社です。現在、システム開発関連の市場は活況で、弊社も安定的に伸びています。エンジニアをしっかりと抱えていることが、強みだと考えています。市場はエンジニア不足ですから、エンジニアをしっかりと抱えていることは強みです。
ただ、そのような弊社だからこそ、市場の期待値はもっと高い水準になると考えています。事業拡大や成長スピードを高め、デジタル人材の確保のために、積極的にM&Aをしていく方針です。
また、組織としては、現状の人数でどうやって業務を最適化するかも課題です。
問題意識があり、自分から課題発見して、改善する行動できる人が必要です。今は事業を伸ばす時期なので、それを支えられる経営管理のメンバーを求めています。組織の屋台骨として企業成長に貢献する経験は、遣り甲斐はもちろんですが、コアキャリアになるはずです。私もディップやクリエイターズマッチでの経験が、今でも役にたっています。
――(清水)マネジーの読者層である管理部門の方や、CFOを目指す経理の方にメッセージをいただけますか?
経理や管理部門の仕事は経営や事業部から見ると、できて当たり前、成功することが前提の仕事です。だから自身の仕事ぶりが十分に評価されていない、ちゃんと見て貰えていないと不満を感じることがあると思います。
もし、そう感じている方は、単に決算で出てきた数字から何ができるかを提言すること、業務を安定稼働させたら次の課題を自ら発見して解決策を提示することを意識してみてください。それが、評価に繋がります。具体的に何をしたらよいか、評価を得てキャリアアップをしていくために必要だな、と私が思っていることがあるので紹介しておきます。
1.優秀な人のマネをする(学ぶ)
社内外にいる自分が優秀だなと思う人には、とにかく積極的にアドバイスをもらうと良いと思います。本を読んで体系的に学ぶことも大切ですが、聞くことでより早く修得できます。
特に管理職の人やそれを目指す人は、これが出来る必要があると考えています。
2.愚直に繰り返す
課題を発見して解決策を実行したときに、結果が出ないとすぐに辞めてしまう人がいますが、途中で辞めないことです。上手く行かないのには、理由があるのでそれを一つずつ解決していきましょう。成功するまでやり続けることが大事です。
3.業務領域を自分で定めない
「これは経理の仕事じゃありません」とか、自分で領域を定めると経験の幅が狭まってしまいます。例えば、経理担当は会社の数字を最も知っていて、事業の現状から将来を見据えることができるのだから、例えば任され得たらIRくらいはできないといけないと思います。
経理の仕事を事業成長に関わる仕事ではなく、作業としてやっているとこの視座は得られません。本気で経理として一流を目指してキャリア形成をするなら、事業部と同じ目線で話せるくらい事業理解をしておくべきだと思います。特に管理職や経営幹部を目指したい人は、これが大事です。
例えば、CFOは経営層と社内を数字で納得させるポジションです。事業と伴走した経験が無いと、資格や知識だけもっていても難しいと思います。経営層の意をくみ取ってコーポレート全体の組織をマネジメントできる人でなければならないからです。
事業を核に置いた考え方をできるようになりましょう。役員や代表と、事業に関わる折衝などを行うのですから知識だけじゃダメです。CFOは経理の延長線上にはないですからね。
――以上になります。本日はありがとうございました。
仕事をしながら次のやりたいことを見つけるので、逆算してキャリアは作らないとおっしゃった永山さん。
ただし、やりたいことが見つかったら習得すべき知識とスキルを全力で身につける、やると決めたら最後までやる、という強い意志をお持ちの方でした。
成長企業では変化を厭わないことはもちろん、むしろ新しい課題を見つけて自ら積極的に変化を創っていく行動力が何より大切だと学ぶことができました。
永山 亨(ながやま とおる) / 株式会社アピリッツ 取締役執行役員CFO
1973年生まれ。専修大学卒業後、西武鉄道のグループ会社で経理業務を経験。その後、株式会社メンバーズやディップ株式会社にてIPOの関連業務に携わる。2020年4月には取締役執行役員CFOとして株式会社アピリッツに入社。IPOの準備中であった同社を2021年、JASDAQ上場へと導いた。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division/執行役員
2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。
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