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昨今、著作権法の改正が相次いで起こっています。とくに企業法務に関わる著作権改正は、年々活発な動きを見せており、動向を追いきれていない方も多いのではないでしょうか。
今回は企業法務の著作権に焦点を当て、昨今の改正の流れについて解説します。
著作権法は、著作物の利用に関するルールになります。なぜ著作権法が定められているのかというと、著作物を創作した人の権利を守り、日本文化全体の発展に寄与するためです。
著作権法では、著作物を創作した人を「著作者」、そして著作者が法律によって得られる権利を「著作権」と呼びます。たとえばある著作者が、著作権によってライセンス料を得るといったケースが挙げられます。
著作権がしっかりと認められていれば、著作物が健全に使用されるようになります。すると著作者のモチベーションも高まり、優れた著作物が多く生み出されるようになるでしょう。著作者だけが利益を得るのではなく、文化全体の発展により、著作物に触れる人々にとっても大きなメリットがあります。
直近の法改正でよく知られているのは、平成30年(2018年)に起こった著作権法改正です。
・デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限
・教育の情報化に対応した権利制限
・障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限
・アーカイブの利活用促進に関する権利制限
・著作権保護期間の延長
・著作権等侵害罪の一部非親告罪化
・著作権の移転と第三者の保護
著作権法が定められている目的は、著作物をめぐる健全な環境を守り、文化全体の発展に寄与することです。2018年の著作権法改正が行われたのは、急速に進むデジタル化に伴い、著作物の利用を促進するのが主な目的でした。
たとえば「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限」では、インターネットビジネスに焦点を当て、著作物を利用できるケースをより柔軟に認めています。
たとえば以前は、「AI関連のビジネスをしているが、Webページを複製すると訴えられるかもしれない」といったリスクがありました。企業が訴えられるリスクを避けようとすると、創造性のあるビジネスが生まれなくなってしまいます。
そこでこの法改正により、「著作者の利益を通常害さないと評価できる行為類型」と「権利者に及びうる不利益が軽微な行為類型」の2つに該当するものについては、著作者の許諾を取らなくても使用できるようになりました。
令和2年(2020年)の著作権法改正も押さえておきたいポイントです。内容は以下のようになっています。
・インターネット上の海賊版対策の強化
・写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大
・行政手続きに係る権利制限規定の整備
・著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入
・著作権侵害訴訟における証拠収集手続きの強化
・アクセスコントロールに関する保護の強化
・プログラムの著作物に係る登録制度の整備
平成から令和にかけて、インターネット上の海賊版が多数登場しました。とくに漫画作品の海賊版は多く、幅広い出版物がタダ読みされ、出版業界に大きな衝撃を与えていました。これらの対策として、リーチサイト・リーチアプリの違法化や、海賊版のダウンロードの違法化が行われています。
他にも、著作物の円滑な利用を図るための措置や、適切な保護を図るための措置がなされました。
令和3年(2021年)改正の内容は以下の通りです。
・図書館関係の権利制限規定の見直し
・放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化
図書館関係の権利見直しについては、新型コロナウィルス感染症拡大の影響が大きいとされています。とくに図書館の休館が相次いで起こった際は、「実際に図書館に行かなくても資料を見られるようにしたい」といった事業が大きくなりました。
また放送番組のインターネット同時配信に関する権利の見直しは、見逃し配信サービスの隆盛が背景として挙げられます。番組の放送をしたい事業者と、自分の好きな番組を見たいユーザーの双方にとって、大きなメリットがもたらされたといえるでしょう。
著作権法は、頻繁に改正されていますが、企業側でどのような取り組みができるのでしょうか。まずは社内研修を徹底し、企業全体でナレッジを高めていくのが重要でしょう。最近では講師などの外部リソースを使って、研修をする企業も増えています。
また社内の法務体制の強化も欠かせません。知財法務部門のリソースを増やす企業も多くなっており、今後ますます注目される分野になるでしょう。もちろんリソースを増やすためには、相応のコストが必要になります。企業でどの分野に注力していくのか、一つの方向性を示していく必要があるでしょう。
今回は企業法務に関わる著作権法改正について見ていきました。著作権はとてもデリケートな問題であり、とくに著作物を利用する企業にとっては、それなりのリスクが伴います。
「気づかないうちに著作権侵害をしていた」といったことがないように、企業全体で著作権に対する意識を高めていく必要があります。必要に応じて研修をしたり、リソースの割り振りを考えたりするなど、新しい時代に適応していく動きが重要です。
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