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一般社団法人「日本 IR 協議会」は、全上場企業3,987社に実施した「IR 活動の実態調査」(第29 回)で、73%の企業が独立社外取締役の人数要件を満たしていることを発表しました。
コーポレートガバナンス・コードの再改訂や、東京証券取引所の市場区分見直しなどがその背景にあるようですが、企業がIR 活動への取り組みを加速させていることもわかりました。
目次【本記事の内容】
ビジネスのグローバル競争が激化していますが、その中で日本企業が勝ち残っていくためには、海外の投資家が日本企業の将来性に魅力を感じ、より多くの投資を呼び込むことが大切です。
そのために、日本企業のガバナンスを底上げすることを目的に、金融庁と東京証券取引所が2015年に共同で策定したのが「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」です。
また、東京証券取引所が市場区分を見直したのも、海外投資家を意識したものですが、上場基準が最も厳しい東証プライムの上場会社には、より厳しい水準を適用するため、コーポレートガバナンス・コードを2021年6月に一部を改正しています。
改正点の主なポイントとして、東証プライムの上場企業は、取締役会の独立社外取締役の割合を3分の1以上選任すること、企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保、サステナビリティについての基本的方針策定と取り組みの開示などがあります。
取締役会の構成割合では、「独立社外取締役3分の1以上」については、73%が要件を満たしているという結果でしたが、「多様性の確保」に対応できているのは、半数以下の41%にとどまっています。
また、サステナビリティの開示については、ESG(環境・社会・企業統治)など非財務情報の開示をしているのは61%となっています。しかし、IR活動での活用については「特に非財務情報を活用した対話について取り組みは実施していない」が35%となっています。
こうした非財務情報を、企業価値にどのように反映させていくのかが、東証プライム上場企業のこれからの課題といえそうですが、IR 活動については、実施している企業が97%と極めて高い水準にあることもわかりました。
IR活動のオンライン化が進んでいることも、この調査結果から見えてきました。電子媒体を利用しての情報開示はモバイル対応が進み、SNSを活用する割合も増えています。
IR活動の体制については、「独立した専任部門」が42.9%と前回調査より増えていますが、「独立した専任部門はないが、IR専任者を置いている」は28.2%とやや減少しています。
「IR活動の実態調査」から見えてきた課題は、ダイバーシティとリスクへの対応についてです。
IR実施企業が課題として挙げているのは「非財務情報が中長期的に企業価値向上につながることを明確に説明」(73.6%)、「外部投資家の目線を十分に反映させた上で、対話に必要な情報開示の体制や発信する内容を社内で十分に検討」(66.2%)です。
また、「女性活躍推進や国際性向上など、ダイバーシティへの取り組み強化」(60.7%)、「リスクの開示や管理体制の強化」(60.6%)も、課題の上位に挙げられています。
コーポレートガバナンス・コードの再改訂も、東京証券取引所の市場区分見直しも、海外から投資マネーを呼び込むことが最大の目的ですが、今年の東証の値動きは、必ずしも企業の業績や将来性が反映されたものではなさそうです。しかし、東証プライム上場企業は、着実にグローバル化を視野にIR活動に取り組んでいるようです。課題をクリアして、正当な評価が下されるようになるまでは、もう少し時間がかかるかもしれません。
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