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テレワークの普及によって働き方の選択肢が広がり、仕事に対する考え方もこれまでとは異なった価値観が尊重されるようになっています。変化の兆しはさまざまな場面に現れていますが、家庭内にも大きな影響を及ぼしているようです。
これまでは、夫は朝早く出勤し、夜遅くなってから帰宅することが当たり前でした。しかし、テレワークの普及によって夫が家で仕事をするようになり、家で過ごす時間が大幅に増えました。
それによって、家事や育児に積極的に参加するようになった夫も増え、「育児と仕事の両立」という観点からはテレワークはプラスに作用した面もあるようです。
明治安田生命が実施した「子育てに関するアンケート調査」によると、テレワークが普及したことで「子どもとの絆が深まった」など、子育てに関して好影響があったと感じている働く男女の割合は約7割となり、大多数がテレワークを歓迎する意向を示しています。
ところが、専業主婦のテレワークの受け止め方はやや違うようです。3割強が「夫にテレワークをしてほしくない」ようで、「夫がずっと家にいることで家庭不和になり、子どもに悪影響を及ぼす」というのがその理由です。
子育て・家事への好影響7割と悪影響3割という、家庭によってテレワークの影響を真逆に受け止める実態が浮かび上がりました。ネット検索してみると、テレワークで夫が家にいる時間が増えたことに対する妻側の不満が数多く寄せられています。
たとえば昼食一つとってみても、「あれが食べたい、これは食べたくない」とやたら注文の多い夫の存在が、妻のストレスになっているようです。
また、書斎がない家庭ではリビングなどを臨時の仕事場とで仕事しているケースが多く、「Web会議が始まると静かにしていなければならないし、テレビをつけることもできない」「家事の合間にゴロンと横になることもできない。しかも、手伝う素振りもない」など、数え上げればキリがないほどの不満が、ネット上にはあふれています。
一方で、家事の手伝いに積極的に参加する夫もいますが、それが別の悩みを生み出してしまったケースもあるようです。料理に目覚め、食材にこだわるあまりに食費がかさんでしまったなど、家計をやり繰りしている主婦にとっては“痛し痒し”というところでしょうか。
これまでは休みの日か夜しか家にいなかった夫が、四六時中家にいるという状況は、想像以上に妻や子どもに精神的な負担をかけているようです。しかし家庭内での夫・父親の存在というのは、実はコロナ前からあまり歓迎されてはいなかったようです。
かつて、定年退職となり、日がな一日ゴロゴロしている夫を“粗大ゴミ”呼ばわりしていた時代もあります。家事を手伝うわけでもなく、「お茶!」「新聞!」などと、まるで部下に命ずるかのような口調でふんぞりかえっていては、粗大ゴミ扱いされるのも当然だったかもしれません。
しかし時代が変わり、いまや育児に積極的に参加する“イクメン”が評価される時代です。明治安田生命の「子育てに関するアンケート調査」でも、自分の夫がイクメンだと思う妻の割合は2018年が19.3%でしたが、今回の調査では24.8%に上昇しています。
夫と妻の両方を合わせると56.0%ですから、夫は妻よりも自分をイクメンだと思っている割合が高いようですが、そのギャップが、テレワークで夫が家にいる時間が増えたことに対する妻の不満につながっているのかもしれません。
それにしても、思い起こされるのが、かつて一世を風靡した防虫剤CMのキャッチフレーズ「亭主、元気で留守がいい」です。そう思われないため、あるいは粗大ゴミ呼ばわりされないためにも、家事や育児、そして介護に積極的に参加する意識を改めて見直してみる必要があるのではないでしょうか。
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