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新型コロナウイルスの感染拡大が始まった昨年来、テレワークを導入する日本企業が増えてきました。そうした中で現在、テレワークの普及によりニーズが低下したことが大きな理由の一つとなり、オフィスビルにおける空き室率の増加傾向と、平均賃料の減少傾向が顕著になりつつあります。
そこで今回は、コロナ禍によりオフィスビルの空き室率と賃料がどのように変化していったのかを、データを示しつつ詳しく解説しましょう。
パーソナル総合研究所の研究結果をもとに日本総合研究所(日本総研)がまとめたデータによると、東京都におけるテレワーク実施率は、2020年2月以前では 1割強に過ぎませんでした。それが新型コロナウイルスの脅威が本格化した2020年3月には2割以上に急増し、さらに同年4月には5割近くにまで増加しています。
コロナ禍以前から多様な働き方の一つとして、自宅などで働くテレワークには注目が集まっていましたが、各企業での体制未整備などが原因で普及はほとんど進んでいませんでした。しかし、コロナ禍の中でテレワークの導入を余儀なくされる企業が増え、一気に広まり始めたわけです。
テレワークが定着してくると、それまでのような広いオフィスが必要ないという企業が増えてきます。そうした企業の中には、賃料の高い都市部で広大なオフィスフロアを借りるのではなく、賃料の安い狭い物件にオフィスを移転することを決めるケースも出てくるでしょう。つまり、都市部におけるオフィスビルへのニーズが減ってしまうのです。
ニーズが減少すれば、レンタルのオフィススペースに空きが生じたり、平均賃料が下がったりします。実際、日本経済の中心地である東京都心部では、コロナ禍の前と後を比べた場合、オフィスビルの空室率が増加し、平均賃料も低下しつつあるのです。
オフィス仲介大手の三鬼商事によれば、コロナ禍が本格化する直前の2020年2月時点では、東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区のいわゆる都心5区のオフィスビル(100坪以上の主要賃事務所)における平均空室率は1.49%で、2019年2月時点では1.78%でした。
また、2020年2月時点の平均賃料は坪単価では2万2,548円で、1年前の2019年2月時点の2万1,101円から1,400円以上も増えていました。
これらのデータを踏まえると、コロナ禍以前の都心5区のレンタルオフィスビルでは、空室率は減少傾向にあり、平均賃料は上昇傾向にあったと言えます。オフィスビルへのニーズは高まりつつあったわけです。
同じく三鬼商事のデータによると、新型コロナウイルスの感染拡大が生じてから1年後の2021年3月時点では、都心5区にあるレンタルオフィスの平均賃料は坪単価で2万1,541円となっています。コロナ禍が本格的に始まる前の2020年2月時点と比べると、1,000円近くも減少しているわけです。
平均賃料が減少するということは、それだけ需要が減少していることを意味します。実際、2021年3月時点での同地域・同物件の平均空室率は5.42%で、コロナ禍前の2020年2月から4ポイント近くも上昇しています。ニーズが減って物件に空きが出るようになれば、より借りやすくするために平均賃料はどうしても下がります。
コロナ禍以前は、都心5区のレンタルオフィスの平均賃料は上昇し続け、平均空室率は減少傾向にありました。ところがコロナ禍以降は一転して平均空室率が上昇し、平均賃料も下がっているのです。
日本総研の試算によると、都内で働く人の1割がテレワークとなった場合、東京都心部におけるオフィス空室率は15%まで上昇するといいます。リーマンショック後、先述の都心5区における平均空室率が9.04%にまで上昇したことがありましたが、今後さらにテレワークの普及が進むと、それよりも空室率が高まるとも考えられます。空室率が上昇すれば、当然ながら平均賃料もそれに合わせて大きく下がってくるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前は、都心5区にあるレンタルオフィスでは空室率は減少傾向、平均賃料は増加傾向にありました。しかし、コロナ禍によりテレワークが普及し、レンタルオフィスへのニーズが減ってくると、空室率は増加傾向となり、平均賃料も減少傾向が生じました。コロナ禍はレンタルオフィスマーケットにも大きな影響を与えていると言えます。
コロナ禍により臨時的にテレワークを導入した企業の中には、出社してもらうよりもテレワークの方が生産性は上がったというケースも生じています。そのため、感染が収まったあとも、一定数のワーカーが引き続きリモートワークを続けるのではないかとも予想されており、レンタルオフィスの空室率・平均賃料の動向は今後も注目を集めそうです。
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