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近年、社会全体に働き方改革の波が押し寄せている中、会計業界の働き方も変化しつつあるという話が聞こえてきています。
かつては、大手監査法人と言えば、会計士の資格取得を目指す人にとって憧れの勤務先であり、会計畑の多くの若手が就職先に選んできました。
ただ、大手監査法人での勤務は、高収入が魅力である一方、仕事がハードである傾向が強く、繁忙期には人間らしい生活ができないほどの激務になるのも珍しくありませんでした。
実際に、「忙しさ」は大手監査法人からの転職理由トップであり、ライフイベントの節目や昇格などを機に、ワークスタイルが継続困難であると感じる人が多かったようです。
そんな監査法人ですが、最近は社会の深刻な人材不足の煽りを例外なく受けており、ついに世の中の波に乗って働き方改革に乗り出しています。
大手監査法人全体の働き方改革、実情と危機感
2011年のオリンパス事件や15年の東芝の会計不祥事以降、監査法人は企業の不正探しに、これまで以上の労力を割かざるを得なくなりました。
加えて、国際会計基準(IFRS)への移行や企業活動のグローバル化によって会計処理が複雑化しており、監査現場の仕事は増える一方です。
2000年代初めに、金融庁と監査業界は一丸となり会計士を増やそうとしましたが、直後のリーマン・ショックで尻つぼみとなり、現在の慢性的な会計士不足につながっています。
しかし、こうした状態が続くことは日本株市場の信頼回復の足かせとなる可能性があるという危機感もあり、Big4監査法人を中心に業務効率化への取り組みを始めざるを得ない状況になっているのです。
監査法人の働き方改革 各社の取り組み
大手監査法人で行われている取り組みの一例をご紹介しましょう。
・有限責任あずさ監査法人
あずさ監査法人では、「優秀な人材が入ってこなくなるのではないか」という危機感から、働き方の見直しに着手。
3月期本決算を控える4~5月の過重労働を改善するため、比較的閑散期である時期に新規受注を一時停止して、監査作業の工程を抜本的に見直し、作業量を3割減らすことを目指すと言います。
具体的には、夜9時以降はパソコンから社内のネットワークに接続できないようにして、無駄な残業を減らすようにしたり、決算書のどこにリスクがありそうか焦点を絞って効率的にチェックしたりすることに取り組んでいるようです。
・有限責任監査法人トーマツ
トーマツは2017年12月に、監査品質の向上と監査業務における働き方改革の促進を目指す「トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター」をオープン。「監査イノベーション」と銘打ち、監査業務の標準化や公認会計士以外の多様な人材の登用、デジタル技術の活用などに取り組んでいます。
会計業界で働く人の声
このように、各社がさまざまな施策を実施していますが、現場で働く会計士の方は、こうした取り組みについてどのように感じているのでしょうか。
調査により聞くことができたリアルな声を、以下にご紹介します。
・会計士A(マネージャー)
「残業制限や受注停止等の取り組みは、現場としては肉体的にも精神的にも負荷が軽くなった印象があります。特に、休日出勤がなくなったのは大きな変化と感じています。」
・会計士B(シニア)
「さまざまな環境で働いている会計士仲間たちと話をすると、Big4監査法人でそれぞれ働き方改革が進行しているということを聞きます。しかし、各社の方向性はやや違っているようです。監査の質を重視するのか効率を重視するのか、改めて各監査法人が模索しているように感じられます。」
・会計士C(地方事務所)
「私自身は地方拠点に所属しており、働き方改革に関しては正直、東京に恩恵があるもので、地方は逆に悩みを抱える結果になっているように感じています。特に問題なのは、新規案件を受注しにくくなっていること。売上、稼働に影響が出ています。企業間のM&Aが活発なため、組織再編でロストしてしまうクライアントも多く、数字の下降に拍車をかけています。」
この他、事業会社の顧客からも、監査対応時間が減って経理部門の残業時間が減少しているとの成果が報告されています。しかし、一方では監査の質を担保することについて不安視する声も挙がっています。
今後、監査法人で働き方改革が進むかどうかは、時間を削減しつつクオリティを維持できる仕組みを作れるかが鍵となってきそうです。
監査法人の働き方改革 今後の課題
今回は、監査法人の働き方改革について、現場の声をお聞きしました。
取り組みに関しては良い点・悪い点があるようですが、全体的には働きやすい環境が整備されてきたという印象があるようです。
上記でご紹介した以外にもさまざまな施策を実施されており、監査法人は若手や女性も定着して長期間働ける状況に変わってきているのではないかと感じられます。
公認会計士の方々が初めて働く先の多くは監査法人でそこから様々な業界、会社へ転職されます。
監査法人を筆頭に、この働き方改革の波が会計業界全体に広がるか、若者が目指す業界になるかどうか、監査法人が担う責任は重い。
(文/MS-Japan働き方研究所 野口 浩輝)
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