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定年制度はいつ何のために始まった?
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定年制度はいつ何のために始まった?

公開日2018/08/13 更新日2018/08/12

最近では定年を過ぎても再雇用やアルバイトで仕事を続ける人が多くなり、定年退職イコール現役引退とは言えない状況になりつつありますが、今でも多くの人が「定年退職」という言葉を違和感なく口にしていると思います。

しかし、定年で退職するという制度は、人間が文明を築き進化する過程で構築された制度です。いつ、何のためにこの定年制度は始まったのでしょうか。定年退職という概念の由来と共にご紹介しましょう。

定年制度の始まりは明治20年

現在最古の定年制度として記録に残るのが東京砲兵工廠の職工規定と言われています。1887年(明治20年)に制定されたこの規定には、55歳を定年とする定めが記されていました。これが徐々に広がりを見せ、1902年には民間企業でも定年制度が制定され始めます。

当時は平均寿命が43歳前後で、55歳定年というのは非常に長く、ほぼ終身雇用といったイメージであったと考えられます。しかし現在では平均寿命が当時と比較して30歳程度伸びており、それに準じた期間とは到底言える長さではありませんが、雇用期間としても少しずつ改定が重ねられ、現在では定年年齢が60~65歳前後まで延長になりました。

「定年」という概念は中国の「礼記」から

実際の定年制度として記録があるのは明治20年からですが、実際は奈良時代までさかのぼり、定年制度の礎となる制度が存在していました。

養老律令(8世紀前半)には、「役人は70歳を超えたら職務を返上する」という定めが記されています。これは「致仕(ちし)」と言って、中国の「礼記」にならった考え方でもあります。礼記では「70歳を超えたら地位を他の人に譲る」ということが礼だとされていて、言い返せば、当時の定年とは自分で礼をわきまえ、自ら判断し身を引くこととされていたのです。

年金支給開始年齢と定年年齢

昭和53年頃、定年制度を導入する企業は95%を超えており、当時の定年年齢は55歳が最も多い状況でした。しかし次第に人口ピラミッドの形が崩れ始め、徐々に年金受給者の割合が増加し始めます。それに伴い、年金支給開始年齢が少しずつ引き上げられ、現在では65歳支給開始と大幅に引き上げられています。

定年年齢に達し、退職すると働くことによる収入が途絶えてしまいます。それを補う年金制度ですが、支給開始の引き上げに伴い、定年年齢が55歳や60歳では年金の受給まで空白の期間が出てきてしまいます。そのために講じられた措置が「高年齢者雇用確保措置」です。

現在の「定年制度」と「高年齢者雇用確保措置」

現在、「定年」は「労働者が一定の年齢に達したことを退職の理由とする制度」と定められており、高年齢者雇用安定法により定年年齢は60歳を下回ることができないとされています。

そして退職に関する事項は就業規則に必ず記載されなければならないことであり、就業規則に定年年齢に関する規則が記載されている企業は定年制度を設けている企業になります。したがって、定年年齢に関する記載がない企業は、定年制度を適用していない企業となるのです。

平成29年就労条件総合調査では、95.5%の企業が定年制を定めており、このうち79.3%の企業が定年年齢を60歳と定めています。これは企業の規模によっても大きく異なり、規模の大きい企業(1,000人以上)になると60歳定年が90.6%にまで上昇します。

この60歳定年制を含む、65歳未満を定年年齢とする企業・事業所においては、高年齢者雇用安定法により、高年齢者雇用確保措置を行う必要があります。

  • 定年を65歳まで引き上げる
  • 希望者全員を対象とする、65歳までの継続雇用制度を導入する
  • 定年制を廃止する

該当企業・事業所は、以上のいずれかを実施しなければなりません。

この中でも継続雇用制度を設ける企業が多く、全体で92.9%に達します。

継続雇用制度

継続雇用制度には2種類あり、どちらかを設ける場合と、両方を設ける場合とあります。

【勤務延長制度】

定年を迎える以前と同様の労働条件で、勤務を延長する制度

【再雇用制度】

一旦退職させ、再度雇用する制度
労働条件を見直すことが可能

全体を見ても再雇用制度を設ける企業が最も多く、72.2%となっています。こちらも規模が大きくなるほど再雇用制度を設ける企業が多くなり、1,000人規模の企業では再雇用制度のみを設けている企業割合が89.6%にまで上昇します。

高年齢者を雇用するということは、近年問題となっている労働力不足を補うものとしても有効です。しかし労働条件として定年前と同等の水準で雇用を継続する以外にも、年齢や体力に合った条件で雇用の見直しを行い、勤務意欲の維持に加え無理のない労働環境を準備することが大切です。

もちろん定年前と同等の労働条件で勤務することが可能な方には相当の環境を準備し、労働者側企業側双方に有益な関係を構築することもとても大切です。いずれにせよ、労働者と企業の双方が納得したうえで雇用を継続する必要があるのです。

この継続雇用制度に関しては、どんな場合も必ず雇用関係を継続しなければならないという訳ではありません。雇用を継続するにあたり、提示した労働条件に折り合いがつかず、雇用の継続を断念したという場合は法律違反には該当しません。もちろん、それには常識範囲内の条件を提示することが求められ、常識を逸脱した条件の提示は無効とされる可能性があります。

平均寿命が延びたこともあり、最近では元気な高年齢者の方がたくさんおられます。自ら収入を得ることは人生の喜びでもあり、生活に張り合いも出てきます。たくさんの経験を積み、知識も豊富な高年齢者と、今の日本を支える中年、今後の日本を担う若者の皆が手を組み、より良い環境へと変えていける世の中になってほしいものですね。

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