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上場承認企業の大量辞退や承認取り消しの増加など、まさに異例尽くしの展開となった2020年のIPO市場ですが、その特徴とIPO市場の動向を振り返ってみましょう。
2020年のIPO市場が、異例尽くしの展開となった最大の要因は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による国内景気の悪化です。
緊急事態宣言発令となった春先には、上場延期や承認取り消しが相次ぎましたが、最終的にはIPO社数は前年より7社増え、93社が株式上場を果たしました。
市場別では東証マザーズが63社、ジャスダックが14社、東証2部が9社、東証1部が6社、名証セントレックスが1社で、2007年の121社に次いで、13年ぶりの高水準となりました。
また、IPOで注目が集まる初値騰落率の年間平均は129.9%で、前年の74.8%から大きく上昇し、2005年以来、15年ぶりの記録的な騰落率の高さとなりました。初値が公開価格を上回ったのは93社中69社で、うち39社は初値が公開価格の2倍以上となりました。
この数字だけを見ると、IPO市場はコロナ禍でも好調だったように思えますが、承認取り消し社数が19社と、米同時多発テロがあった2001年の20社に次ぐ高水準となり、公募割れ社数も23社と、2008年のリーマン・ショック時に次ぐ多さです。
2020年のIPO市場を振り返ると、年初から年末まで、良くも悪くも記録尽くめで変動の激しい1年だったようです。
では、パンデミックとなった新型コロナウイルス感染拡大は、世界のIPO市場にどのような影響を与えたのでしょうか。
世界の証券取引所のIPO資金調達額ランキングを見ると、第1位はアメリカのナスダックの533億ドル(約5兆5,581億円)、第2位が香港証券取引所の503億ドル(約5兆2,257億円)、第3位が上海証券取引所の499億ドル(約5兆1,841億円)です。
ブルームバーグがまとめたデータによると、2020年にアメリカで実施されたIPOを通じた調達資金は、前年の約2倍の1,800億ドル(約18兆5500億円)に達し、これまでの最高だった2000年の1,020億ドルを大幅に上回る結果となりました。
コロナ禍にもかかわらず、アメリカや中国のIPO市場は、予想を超える活況を呈していたようです。その勢いは衰える兆しが見当たらないことから、2021年も続きそうな気配が濃厚です。
コロナ禍にもかかわらず、IPO市場が活況を呈した背景には、アメリカの証券市場に上場している中国企業が、香港市場に重複上場するケースが相次いだこともありますが、この状況を“IPOバブル”と指摘する声もあります。
IPO銘柄だけでなく、年明けの1月8日午後の取引で、東京株式市場は1990年8月以来、30年ぶりに日経平均2万8,000円を超えました。
この株高現象を、バブルによるものと判断するのは早計ですが、新型コロナワクチン普及による感染抑制への希望的観測や、バイデン氏の米大統領就任など、景気拡大への期待感が株高の背景にあるといえるのではないでしょうか。
いずれにしても、これほど記録的で変動の激しかったのが2020年のIPO市場です。買う人が多ければ株価は上がるし、買う人が少なければ株価は下がります。たとえ景気の大きな変動があっても、安定的な収益体質や事業基盤がしっかりとしていれば、株価は高値を維持していくはずです。
しかし、その当たり前のことが必ずしも通用しないのが、株式市場の不思議なところで、2021年も、株価の値動きには、注意しておく必要がありそうです。
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