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今年7月25日、商船三井がチャーターした大型貨物船「WAKASHIO」がモーリシャス島沖のサンゴ礁に座礁。燃料として積んでいた重油約4000トンのうち1000トンが海洋に流出しました。
現場では流出油の回収が懸命に行われていますが、自然環境保護関係者の間では深刻な海洋汚染が心配され、事故処理の行方が注目されています。
モーリシャス島はアフリカ大陸東南のインド洋に位置する人口約127万の島国。面積は約1980平方キロメートルで東京都全域とほぼ同じ広さです。
透明なマリンブルーの海、白い砂浜、青いサンゴ礁、マングローブ林などに囲まれ、希少生物が生息する豊かな自然環境が残っている同島は、欧米等から年間130万人以上の観光客が訪れる国際リゾート地でもあります。
島内には、国際的に重要な湿地の保全を定めた「ラムサール条約登録地域」が3か所もあり、サンゴ礁、海草群落、マングローブ林などと共に生物多様性に富んだ世界有数の豊かな海を形成しています。国連の生物多様性条約によると、同島の周辺海域は魚約800種、海洋哺乳類17種、ウミガメ2種を含む約1700種の海洋動物の生息地にもなっています。
このような貴重な自然環境の中で今回の貨物船座礁による重油流出事故が発生しました。
貨物船から流出した重油の一部はラムサール条約登録地域の「ポワントデスニー」にも漂着、マングローブ林と干潟に生息する生物の絶滅が懸念されています。約1700種と言われる海洋動物を始めとする海洋生態系の打撃も懸念されています。
船舶の衝突、座礁、沈没などの海難事故によって引き起こされる重油の海洋流出(タンカーの場合は積み荷の原油が流出することも)は、大規模なものだけでも過去20件を超えています。その度に自然環境と産業に甚大な影響を与えてきました。その主なものとして次が挙げられます。
魚のエラや体表は粘液膜で覆われており油が付着しにくくなっています。しかし重油が海水と混ざり合って海水油膜層を形成した場合は、海中の油膜がエラや体表に付着するので魚はエラ呼吸ができず、窒息死するケースがあります。
海鳥は羽毛の間に空気を蓄えることで浮力を得、体温を保持しています。また海鳥は捕食のため海中に潜っても羽毛が海水に濡れないよう、羽毛自体が撥水性被膜で保護されています。
ところが羽毛が重油に触れると、撥水性被膜が溶けてしまいます。したがって重油が皮膚に付着し、羽毛も空気を蓄えられなくなって海鳥は浮力を失い、体温も失います。その結果、海中に沈んで呼吸ができない、低体温症に陥るなどで死に至るケースがあります。重油が皮膚に付着すると飛翔できなくなるので、天敵に捕食されるケースもあります。
クジラ、イルカ、アザラシなどの海洋哺乳類は、重油に触れるとその油が皮膚から体内に浸透し、重油の毒性で内臓が損傷し、中枢神経も損傷して行動傷害や知覚麻痺を引き起こします。その結果、捕食できない、天敵に襲われるなどで死に至るケースがあります。
海草群落が重油に触れると、海草の葉に油が付着するので海草は光合成ができなくなり死滅するケースがあります。海草群落が消滅すると、そこを棲家にしている生物が絶滅する可能性もあります。
サンゴ礁が重油に触れると、サンゴに油が付着するのでサンゴは呼吸できなくなり窒息死し、サンゴ礁も消滅するケースがあります。そこを棲家にしている生物が絶滅するケースもあります。
マングローブは泥質堆積物の中に根を張り、泥質堆積物から酸素や養分を吸収して生育しています。重油がマングローブ林に漂着すると、マングローブは根から酸素や養分を吸収できなくなり、枯死するケースがあります。
原油が流出すると当該海域の魚介類が死滅する、例え水揚げしても石油臭くて売り物にならない、風評被害などで事故発生地域の沿岸漁業が打撃を受けます。また、重油が漂着した海岸地域では景観悪化、磯釣り・磯遊び不能などにより観光業が打撃を受けます。
海難事故によって引き起こされる重油の海洋流出に対しては、過去の流出油処理経験を踏まえ、海洋汚染防止対策としての流出油処理の開発が進んでいます。現在用いられている流出油処理法の主なものに次が挙げられます。
海難事故により海洋に流出した油(原油や重油)は、洋上を漂っている間に油回収装置で物理的に回収するのが、最も効率的で回収期間も短いとされています。
そこで現在は油回収船による油回収が優先的に行われています。日本の場合は3隻の油回収船で全国の沿岸域をカバーしており、油流出事故の現場海域に達すると48時間以内に流出油の大半を回収できるとされています。
海洋に流出した油をフェンスで囲み、油の洋上分散を食い止めてから油吸着力が強い植物繊維を原料にした吸着材を海面に投下し、油を回収する方法です。
オイルフェンスの張り方にはU字型展張、J字型展張、O字型密閉展張などの方法があり、流出油量、潮流、波高、天候などの総合的判断から最適な張り方が決定されます。
油の分解促進機能に優れた薬剤を洋上の油に散布し、油を微粒子化して自然界で分解する方法です。油回収が困難な現場で用いられます。
ただこの処理法は薬剤自体が化学物質であるため、二次汚染リスクがあるのが厄介なところです。そこで日本では「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行規則」と国土交通省令・環境省令により薬剤の散布基準や要件を細かく規定、二次汚染リスク回避を図っています。
海洋国の我が国では、原油積載のタンカーや危険物積載船を含め年間5万隻以上の船舶が沿岸や海峡を通航し、毎年200隻以上の船舶海難事故が発生しています。
国の統計では不明ですが、海難船舶の中には海洋汚染に至らなかったものの原油・重油・危険物の海洋流出を来したケースも少なくないと見られています。モーリシャス島事故のような重油の海洋大量流出とは常に紙一重の差にあると言っても過言ではないでしょう。
このため我が国では、原油・重油・危険物が大量に流出した際の迅速な事故対応と海洋汚染防止対策が極めて重要になっています。海運行政や海運関係機関の海難事故防止活動についても、国民の理解と協力が期待されるところです。
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