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日本は、超高齢化社会に突入しています。これから、高齢の両親の最期を看取らなければならないビジネスパーソンも多いでしょう。
そこで突きつけられるのが「安楽死と尊厳死」の問題です。日本で安楽死と尊厳死は、どのように扱われているのでしょうか。
医療技術や医薬品の目覚ましい進化によって、治る見込みのない患者であっても、延命治療で生き続けることができます。しかし、完治する見込みがないまま過剰な延命治療を続けることは、患者本人にとっても家族にとっても、精神的・金銭的負担が重くのしかかります。
尊厳死は、苦痛なだけの延命治療を続けて生きながらえるより、人間としての尊厳を保ったまま死を迎えるために延命治療を、患者本人の意思によって中止し死に臨むことです。
安楽死も、患者本人の意思によって行われますが、末期状態の苦痛から逃れるために、人為的方法によって死を選ぶというものです。
では、法律で尊厳死と安楽死の境界線が明確にされているかといえば、実は曖昧なグレーゾーンです。安楽死は「嘱託殺人罪」(刑法第202条)に該当すると考えられ、安楽死の措置を行った医師が、有罪判決を受けたケースもあります。
最近では、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した女性からの依頼で、致死量の薬物を投与したとして、嘱託殺人容疑で医師2人が逮捕された事件がありました。
法律では、曖昧なままですが、厚生労働省や日本医師会で尊厳死のガイドラインを策定しています。
「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(平成30年3月改訂)」:厚生労働省
〇人生の最終段階における医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである。
〇医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がされ、それに基づいて、患者本人が、多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを事前に行い、本人による意思決定を基本とした上で、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である。
「終末期医療に関するガイドライン」(平成20年2月):日本医師会
〇終末期における治療の開始・差し控え・変更及び中止等は、患者の意思決定を基本とし医学的な妥当性と適切性を基に医療・ケアチームによって慎重に判断する。
〇患者の意思が確認できる場合には、インフォームド・コンセントに基づく患者の意思を基本とし、医療・ケアチームによって決定する。
どちらも、同じような内容であり、厚生労働省は“積極的安楽死”についてはガイドラインの対象外とし、日本医師会のガイドラインには、「積極的安楽死や自殺幇助等の行為は行わない」と明記しています。
つまり、患者本人と医師、そして患者の家族が合意すれば、“尊厳死”を容認していこうという動きになりつつあるようです。
国会でも議論が行われ、「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」がまとめられました。
しかし、慎重を期する声もあることから、未だ法制化には至っていません。その一方で、リビングウィル(終末期医療における事前指示書)が、注目を集めています。
終末期を迎えた状態になれば、自分の意思を伝えることが難しくなります。そのため、予め終末期を迎えたときに、延命措置を中止するという意思を書面で示す「尊厳死宣言書」といえるものです。
もちろん、現時点で尊厳死が法制化されているわけではありませんから、リビングウィルそのものに法的効力はありません。ただ、患者にリビングウィルを提示された医師の95%がこの内容を受け入れたという調査結果もあるようです。
死は、誰にも訪れるものです。残された家族が戸惑わないように、死んだ後のことを整理しておく“終活”についても、真剣に考えておかなければ時代といえそうです。
もし、病に倒れ、その病が治る見込みがないとわかったときに、延命治療を続けるのかどうかを、家族や医療関係者とじっくり話し合っておくことが、これからは当たり前になるのかもしれません。
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