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目標を達成できる月があれば達成できない月もあるなど、仕事ぶりにムラが見られる社員がいます。その一方で、目標を毎月着実に達成している社員がいます。なぜこんな差が生まれるのでしょうか。その原因の1つがモチベーションといわれています。モチベーションはまた、社内活性化、生産性向上、企業力強化などの原動力ともいわれ、近年は「モチベーションマネジメント」の重要性が高まっています。
普段何気なく口にしているモチベーションの正体とは?人事・労務担当者が社員のモチベーションを上げるためにはどうすれば良いか説明していきます。
モチベーションとは、人が行動する原因、つまり動機のことです。ビジネスの世界では「仕事への意欲」や「動機付け」の意味で使われています。
社員のモチベーションが低い場合、仕事の効率が下がる、業務品質が落ちる、職場の雰囲気が暗くなるなどの現象となって現れます。逆の場合は職場に活気がある、チームワークが優れている、社員のチャレンジ精神が高いなどの現象となって現れます。
このため近年は「モチベーションマネジメント」を重視する企業が増加しています。モチベーションマネジメントとは、社員が高いモチベーションを維持しながら仕事に邁進できる人事・労務制度や職場環境を整備し、それを改善しながら運用することです。
社員のモチベーションが下がる要因は様々ですが、それらを整理すると次の要因に集約されます。
●「やらされ感」で仕事をしている時
社員が自分の仕事に魅力を感じず、「食べるため」と割り切った義務感で仕事をしている場合、モチベーションは低下します。
例えば、その社員が持っているスキルや業務知識を活かせない職場へ配置された場合、その社員は「仕事をやらされている」と感じ、仕事のやりがいや責任感を感じられず、モチベーションが低下します。
●仕事の目標が不明確な時
目標が不明確だと、社員はどの方向を目指し、どんな努力をすれば良いのか分からないので、モチベーションが低下します。
●評価が不当と感じた時
いくら仕事に邁進しても、そのプロセスや成果を正当に評価してもらえないと、社員が自分はこの会社で必要とされていない、自分の替わりはいくらでもいるなどと考えるようになり、モチベーションが低下します。
●職場全体に活気がない時
チームや職場、社内全体に活気がない時、「朱に交われば赤くなる」でモチベーションが高い社員でもやがてモチベーションが低下します。「自分一人がモチベーションを上げれば周囲から浮き上がってしまう、協調性がないと判断される」との心理が働くからです。
仕事のモチベーションには、モチベーションの構成要素とモチベーションの仕組みがあります。
(1)モチベーションの構成要素
モチベーションは次の2つの要素で構成されています。
・外発的動機付け
外発的動機付けとは、インセンティブ、昇給・昇格など外部の「人為的な誘因」による動機付けのことです。高い効果が見込めますが、その効果は一時的であり、個人的成長にも繋がりにくいといわれています。
・内発的動機付け
内発的動機付けとは、興味、関心、意気など自分自身の「内発的誘因」による動機付けのことです。この効果は持続しやすく、個人的成長にも繋がりやすいといわれています。
(2)モチベーションの仕組みを解明した「モチベーション理論」とは
社員のモチベーションを高める仕組みとして、これまで多種多様なモチベーション手法が開発されてきました。その手法の大半がモチベーションの仕組みを科学的に解明した「モチベーション理論」に基づき開発されています。その数は「テイラーの科学的管理法」、「マズローの5段階欲求説」、「マクレガーのX・Y理論」「ハーズバーグの二要因理論」など10説を優に超えます。
その中で代表的なモチベーション理論が次の4説です。
①マズローの5段階欲求説
アブラハム・マズローが提唱した理論です。人間の欲求を5段階のピラミッド形になぞらえ、「人間は自己実現のために絶えず成長する」との仮説の下、第1段階の欲求が満たされると第2段階の欲求を求め、やがて最終段階の「自己実現欲求」に至るとする説です。
第1段階:生理的欲求(食べる・寝る・空気など)
第2段階:安全欲求(生存を脅かされないこと)
第3段階:社会的欲求(あの組織・グループに帰属したい)
第4段階:承認欲求(周囲から認められたい・尊敬されたい)
第5段階:自己実現欲求(自分の能力を最大化し、より完全な人間になりたい)
②ハーズバーグの二要因理論
ハーズバーグが提唱した理論です。モチベーションを決定づけるのは「動機付け要因」と「衛生要因」の2つとする説です。
前者は達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進など「仕事内容からもたらされる満足感」で、この満足感がモチベーションを高める要因になるとしています。
一方、モチベーション低下要因になるのが後者で、会社の労務政策、労務管理制度、監督者との信頼関係、給与、労働条件、職場の人間関係など「仕事環境からもたらされる不満」は、モチベーションの低下要因になりやすいとしています。
それは、人間は衛生環境が悪質だと不快感を覚えるのと同じで、「いくら仕事の満足感が高くても仕事の環境が悪いと、社員はモチベーションを維持できない」としています。
③マクレランドの欲求理論
ハーズバーグが提唱した二要因理論に着目し、モチベーションを4タイプに類型化したのがデイビット・C・マクレランドです。
彼は「モチベーションの基となる欲求は達成・権力・親和・回避の4つであり、モチベーションの裏には必ずこれらの欲求のいずれか、もしくは複数が起因している」としています。
<達成欲求>
報酬よりも何かを成し遂げることによる達成感を満たしたい欲求です。達成欲求が強い人材は個人的な成果に対する関心が強く、率先して行動する傾向が強いとしています。
<権力欲求>
同僚・部下など周囲の人材に影響力を及ぼし、コントロールをしたい欲求です。権力欲求が強い人材は責任を伴う仕事を好み、激しい競争に進んで挑み、自分が重用される立場を求め、上司から指示される仕事を嫌う傾向が強いとしています。
<親和欲求>
協調性を重んじ、周囲の人材と友好的な関係構築を求める欲求です。親和欲求が強い人材は周囲から好かれたい、信頼を得たいとの願望があり、人のために役立とうと努力する傾向が強いとしています。反面、緊張するような場面では耐えられない精神的な脆さがあるとしています。
<回避欲求>
失敗や困難な仕事から逃げようとする欲求です。回避欲求が強い人材は目標を避ける、率先して行動するより周囲の状況を見極めてから行動するなどの傾向が強いとしています。
④期待理論
現代のモチベーション理論は、学術的理論よりもビジネスに即応した実践的理論が重視されています。その代表的な理論が「期待理論」といわれています。
同理論はビクター・H・ブルームが基礎を形成し、レイマン・ポーターとエドワード・ローラー三世が発展させ、ステファン・ロビンスが普及に努めたといわれています。
期待論によると、モチベーションは「努力」、「成果」、「魅力」と3つの変数で構成されており、3変数の掛け算でモチベーションの強弱が決まるとしています。
「努力」は、どの程度の努力をすれば成果に結びつくかの変数。「こんな努力は自分には到底不可能」と感じると努力を諦め、仕事に対するモチベーションが下がるとしています。
「成果」は、どの程度の成果を上げれば自分が望む報酬を得る可能性かあるかの変数。成果を上げてもそれに見合った報酬を得られる可能性が低い場合、モチベーションは下がるとしています。
「魅力」は、報酬を得る仕事に対する魅力度の変数。高い報酬を得る可能性が高い仕事でも、その仕事に対する魅力が低ければモチベーションは上がらないとしています。
期待理論の特徴は、3つの変数が個々にモチベーションに影響するのではなく、掛け算でモチベーションを突き動かすとしているとする説にあります。
すなわち、「努力が成果へ結びつく→成果が報酬へ結びつく→その仕事が魅力的」の関係性が期待できる、あるいは約束される時、人や組織のモチベーションは高まるとしているところが実践的といわれています。
仕事に対するモチベーションが下がった時、企業が取るべき対策は一般に次の見直し・改善とされています。
●自社の企業理念やビジョンを理解しているか?
自分が担当している仕事がどんな役に立っているかが分からないと、社員はモチベーションを上げられません。そのために重要なのが企業理念やビジョンです。これを理解できれば社員は自分が果たすべき役割や目標が明確になり、モチベーションは自ずと上がります。
●貢献度が可視化できているか?
社員が高いモチベーションを維持するには「自分は会社や社会に貢献している」と実感できる仕組みが必要です。その仕組みとは貢献度を数値で表す、表彰するなど目に見える形で社員に示すことです。
●目標設定は適切か?
目標は数値目標とマスタリー目標(自分の能力を高めるための目標)とのセットで設定することが重要です。ただ単に数値目標を追いかけるだけではなく、数値目標達成が自分の成長に繋がっているとの実感が、目標に対するモチベーションを高めます。
●キャリアビジョンは明確か?
社員が仕事をする上において目標やプロセスが大切ですが、もう1つ大切なのが社員個々のキャリアビジョンです。これからどんなスキル・知識を身に着け、5年後、10年後にどんな仕事をしたいのかのキャリア形成目標が明確なら、社員はモチベーションを持続できます。
●不要な仕事をさせていないか?
不要な仕事には「やらされ感」がつきまといます。このため、職場や部門単位で業務プロセスを定期的にチェックし、例えば「会議をするための資料作り」など社員が不要な仕事に忙殺されていないかの把握と改善が重要です。そうして社員の「やらされ感」を取り除き、社員が本来業務に集中できる環境を作ることが、社員のモチベーションを持続させます。
モチベーションアップは、どの企業にも共通する重要経営課題です。とはいえ、モチベーションの在り方は企業特性、事業特性、市場環境など様々な要因で企業ごとに異なります。汎用的なモチベーション手法は存在せず、自社に適したオーダーメードのモチベーション手法を開発しなければならないのが人事・労務担当者にとって悩ましいところといえます。
近年はモチベーションを科学的に測定・管理するツールも開発されています。こうしたツールを活用し、その結果を制度改革、業務改善などに繋げていくのも実効性のあるモチベーション手法になる可能性があります。
現代の経営においては、社員個々の能力より、その相乗効果で企業全体のパフォーマンスが高まる組織的な業務力向上が重要になっています。この観点からもモチベーションアップの重要性が増しています。人事・労務担当者の活躍が期待されています。
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