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2019年9月27日に、厚生労働省は令和元年度版の「労働経済の分析」を発表しました。今回の内容は、「人手不足の下での『働き方』をめぐる課題」をテーマとし、昨今の深刻な人手不足問題を解消するために、外部からの人材確保だけでなく働きやすい職場づくりを目指した働き方改革にも取り組むよう求めています。
「労働経済の分析」は「労働経済白書」とも呼ばれ、一般経済・労働時間・雇用状況などに関する状態や課題について、統計データを用い経済学的に分析する報告書です。厚生労働省により1949年から毎年公表されており、令和元年版で71回目の取り組みとなります。
内容は、発表された時期における雇用情勢の概要をはじめ、新入社員の定着率や従業員の働きがい、働きやすさなどについて取り上げています。そのため、労働経済の分析に目を通しておくことで、会社としての今後の雇用方針や日頃の労務管理、従業員の離職率を下げることなどの参考になります。
今回の「労働経済の分析」で示された内容における大きな特徴の一つとして、「さらなる人手不足感の高まり」が挙げられます。
雇用情勢の動向で示されたデータによると、2018年度の完全失業率は2.4%と、1992年度以来26年ぶりの低い水準で、有効求人倍率も1.62倍と1973年以来45年ぶりの高水準となっています。また、人手不足感を企業規模別に見たデータでは、大企業よりも中小企業において人手不足感の高まりが顕著です。
人手不足に対する企業の取り組み策に関しては、新規・中途採用などの労働市場からの外部調達と、雇用継続や正社員登用などの企業内における内部調達などの実施率が比較的高くなっています。一方で、雇用管理の改善や従業員への働きがいの付与といった、職場環境の改善に着目した取り組みはまだ十分に浸透していないことを指摘しています。
また、企業が人手不足を感じている理由については、「新規の人材獲得が困難になっている」や「従業員の自発的な離職の増加」を挙げる企業が多くなっています。
人手不足の緩和に向けた企業における取り組み内容の項目として、外部調達と内部調達の他に「業務の見直し」というジャンルが設けられています。この中で、「離職率を低下させるための雇用環境の改善」と「従業員への働きがいの付与」の項目が赤枠で囲まれていることから、厚労省がこれらの取り組みに注目していることが分かります。また、「働きがいの向上により、職場定着率や離職率に加え、従業員のストレスや労働生産性が改善する可能性がある」との記載があり、「働きがい」を持つためには「職場における働きやすい環境を整備すること」が必要であるという論調になっています。
正社員における働きがいに関しても、いくつかの項目に分かれて数値化されています。年代別に見ると、働きがいを最も高く感じている年代は60歳以上で、年齢層が若くなるほど低くなっています。また、役職別では部長相当職以上が最も高く、役職なしが最も低い値を示すデータとなっています。さらに、企業規模別では、大企業よりも中小企業で働いている人の方が働きがいを感じている結果となっています。
これらをまとめると「役職のない大企業の若い正社員」が最も働きがいを感じていないといえ、昨今問題となっている「大手企業における若手の早期離職」の現状を裏付ける内容となっているのです。
「労働経済の分析」では、働きがいが高い従業員を多く抱える企業の実態や、働きがいの向上・改善に向けた具体的な取り組み例も紹介されています。
従業員の働きがいが高い企業の実態については、雇用管理で「職場コミュニケーション」「労働時間の短縮」「業務遂行に伴う裁量権の拡大」など、人材育成面で「指導役や教育係の配置」「キャリアコンサルティング等による将来展望の明確化」などへの取り組みが挙げられています。
また、企業の具体的な取り組み事例として、以下のようなことがコラム欄に紹介されています。
・上司と部下が1対1で行う対話を月に1回以上行うことによる離職率の大幅な低下
・テレワークの推進によるコスト削減とプライベート時間の確保
・「トップダウン型から管理職への権限の委譲」「社員全員が参加可能なワークショップの実施による新規事業の採用」などによる、業務遂行に伴う裁量権の拡大
今回の「労働経済の分析」では、人手不足が大きく取り上げられており、これに対する解決策として「働きがい」という言葉が多く登場しています。
2019年4月から本格的に始動し始めた働き方改革を実現するためにも、「働きがいを向上するための取り組み」が企業に求められる時代になるといえるでしょう。
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