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人材ポートフォリオの適正化を図る観点から、どの企業でもパート・アルバイトの活用が重要になっています。しかし、「パートだから、アルバイトだから」と安易な気持ちで採用すると、思わぬ経営リスクを抱え込んでしまうケースが少なくありません。パート・アルバイトの求人・採用において、人事担当者はどのような点に注意が必要なのでしょうか。
パートタイマーとは、1週間の所定労働時間が正社員より短い社員のこと。「パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」では「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されています。
正社員同様、パートタイマーにも労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法などの「労働者保護法令」が適用され、法定労働時間を超えて時間外労働(残業)をさせれば割増賃金の支払が必要です。
パートタイマーが育児・介護休業法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法の要件を満たしていれば、これらの法令も適用されます。
企業には「パートタイマーに対する労働条件明示義務」も課されています。
すなわち、企業がパートタイマーを採用した時は、直ちに「労働条件通知書」(労働契約書や就業規則でも可)を交付し、労働条件を明示しなければなりません。
明示すべき労働条件は
①労働契約の期間、②就業場所および従事すべき業務、③始業・終業時刻、所定時間外労働の有無、交代制勤務の有無、休憩時間、休日・休暇、④賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期、⑤解雇要件、⑥昇給の有無、⑦賞与の有無、⑧退職金の有無、⑨契約更新の有無とその判断基準
など、多岐にわたります。
この他、常時10名以上の社員を雇用している「事業所」では、労働基準法により就業規則の作成が義務付けられていますが、当該事業所の場合はパートタイマー向けの就業規則作成も必要です。
アルバイトとは、雇用期間限定の「有期労働契約」に基づき採用された社員のこと。一般には1年以内の雇用を想定した社員のことで、人事的には「臨時社員」とも呼ばれます。
したがって、雇用期間の満了と同時に雇用契約が終了します。ただ、企業の必要により雇用契約が更新されるケースは珍しくありません。
ところが、雇用契約更新を繰り返した場合は、判例上「常用労働者」と見做されるので、契約更新が不要になった際、企業は契約更新拒否ができなくなる可能性があるので要注意です。
この契約更新不能事態を避けるためには、
①労働契約書に雇用契約期間を明記する、②採用時に契約更新を期待させるような言動をしない、③従事させる業務を正社員と同一にしない、④契約更新時にはその都度臨時社員の意思を確認した上で更新手続を行う、⑤契約更新回数は3回以下にする
などの留意が重要です。
この他、賃金の支払方法・昇給、時間外労働、賞与・退職金、労働時間、年次有給休暇、解雇手続きなども労働者保護法令が適用されるので、アルバイトを採用する場合、人事担当者は何よりも労働関連法令の確認が重要と言えます。
パートタイマーとアルバイトの間には、法令上の区別はありません。
両者とも雇用に際しては先に述べた「パートタイム労働法」が適用されるからです。すなわち、パートタイマー、アルバイト、嘱託、契約社員、臨時社員、準社員など、企業側の名称がいくら異なっていても、パートタイム労働法の定義と要件に合致していれば、法令上はすべてこの法律の対象になるということです。したがって、賃金、時間外労働、有給休暇、社会保険なども、両者に同一の労働者保護法令が適用されます。
パートタイマーとアルバイトのワークスタイルに関しても、下記のように両者の間に基本的な違いはありません。
・自分の都合に合わせた勤務時間・期間などを選べる
・業務形態が多彩
・未経験・経験者、短期・長期、オフィスワーク、技能系業務など業種・職種ともに求人の業務形態が多彩
・短期雇用も多い:イベント業務1日だけ、中元・歳暮等の繁忙期だけなど、短・中期の雇用も多い
・所定労働時間が短いので正社員に比べて収入が低い
・昇給や賞与はあまり期待できない
・雇用の継続性がない
・業務内容が限定的
・正社員と同等の責任は求められないので、正社員の補助的な業務が大半
パートタイマーやアルバイトを採用する場合、人事担当者はこうしたメリット・デメリットを認識した上で求人する必要があるでしょう。
パートタイマーやアルバイトと正社員の間に、労働者保護法令上の区別はありません。また、パートタイム労働法においては、業務内容が正社員と同一、労務管理の仕組み・運用が正社員と同一の2条件を満たしているパートタイマー・アルバイトに対しては、正社員との差別的待遇を禁止しています。つまり、パートタイマー・アルバイトであっても、賃金や諸手当の決定、有給休暇の付与、教育・訓練、福利厚生施設の利用などを正社員と同一にしなければならないのです。
しかし、社会通念上、正社員の場合は下記の勤務状況や処遇が妥当と認識されています。
・無期雇用、定年制
・基本的に定年まで雇用が保証されており、再雇用制度があれば定年以降も一定期間雇用が継続される
・パートタイマー、アルバイトより昇給・昇格の機会が多い
・パートタイマー、アルバイトより賞与額が高い
・異動や転勤がある
・パートタイマー、アルバイトより責任が重い
・企業の基幹業務を担っているので長期休暇が取りにくい
したがって、パートタイマーやアルバイトを採用する場合、人事担当者はこのような違いを認識しておく必要があるでしょう。
2020年4月1日から改正パートタイム労働法が施行されます(中小企業は2021年4月1日から適用)。法律の名称も「パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」から「パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」に変わります。これに伴って「同一労働同一賃金ガイドライン」、「パートタイム・有期雇用労働指針」も施行されます。
主な改正点は、
①不合理な差別的待遇の禁止、②労働者の待遇に関する説明義務の強化、③行政による事業主への助言・指導等の根拠となる規定・裁判外紛争解決手続きの整備
の3つです。
来年度以降、パートタイマーやアルバイトの雇用や活用においてはパート・アルバイトの保護が一層強化されるので、人事担当者は今のうちから自社と顧問契約を結んでいる社会保険労務士等からそのレクチャーを受けるなど、トラブル防止の準備をしておくのが賢明でしょう。
※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁HP等をご確認ください。
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