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「2015ユーキャン新語・流行語大賞」の候補に選ばれ、今では就活用語として定着しているのが「オワハラ」。就活生に対する新卒採用担当者の無頓着な言動が、思いもかけない騒動に発展するケースもあります。
新卒採用担当者は就活生にどんな態度で臨み、どんな言動に注意しなければならないのでしょうか。
「オワハラ」とは、「就活終われハラスメント」の略称であり、企業が就活生に対して内定と引き換えに就職活動終了を強要する行為のことです。
オワハラという言葉は10年以上前から使われていたといわれています。この言葉が2015年の新語・流行語大賞の候補に選ばれたことで一気に認知度が高まり、就活用語の1つとして社会的に定着したようです。それまで就活生の間だけで使われていた用語が社会に拡散した裏には、いうまでもなくSNSの影響があります。
オワハラの背景には、大学新卒者が売り手市場になっている採用環境があります。
つまり、売り手市場になったことにより、企業が内定を出した後も就活生は「もっと良い会社はないか」と就活を続け、望み通りの「良い会社」に受かった就活生は、そうでない会社の内定を辞退するという構図です。
これでは企業は、計画していた大学新卒者採用数を確保できません。そこで内定辞退を防ぐため、採用担当者による様々なオワハラが発生していると見られています。
もう少し具体的に見てみましょう。
大学新卒者が売り手市場になっている今日、企業にとって優秀な大学新卒者の採用活動は他社との戦いです。したがって、面接選考の結果、新卒採用会議などで「この学生は優秀なのでぜひ採用したい」と決まると、企業は即座にその就活生に内定を出し、その就活生を他社に取られないよう、様々な囲い込みを行うという流れです。
一方、就活生の場合は第1志望、第2志望……と志望会社を順位付けしており、滑り止めや保険を掛ける感覚で何社も面接を受けるのが普通です。このため、志望会社から内定をもらった時点で他の会社の内定を辞退する挙に出る訳です。換言すると、内定を辞退された会社は、その就活生にとって志望会社ではなかったということになります。
こうした企業と就活生の思惑の同床異夢がオワハラを生んでいると見られています。
オワハラの事例を分析すると、次の3パターンに類型化できるといわれています。
取引型 | 就活終了を条件に内定を出すパターン。内定が欲しい就活生の場合、この取引は断れない。 |
囲い込み型 | 内定を出した就活生がその後の就活をできないよう、 入社前研修、親睦会、食事会などの開催で自社に囲い込んでしまう。 |
脅迫型 | 内定辞退を申し出ると、内定辞退撤回を露骨に迫るパターン 例)「辞退するなら、今後は君の大学から学生を採用しない」など |
こうしたオワハラを行った企業は、次のような企業イメージ毀損リスクや法的リスクを抱え込むことになります。
就活生にオワハラの烙印を押されると、それが仮に就職人気ランキング上位の企業や社会的信頼性を確立している企業であっても、それが悪評となってSNSなどで拡散され、企業イメージの低下を招くでしょう。すると、その企業は釈明に追われ、また次年度以降はエントリーシートを提出する就活生が激減して新卒採用計画が立てられなくなるなど、致命的なダメージを受ける可能性があります。
また「オワハラされて渋々入社」と思っている大学新卒者がその企業に定着し、戦力化するとは思えません。ひいては、プロパーな人的資源の不足要因や新卒採用経費の無駄遣いにも繋がるでしょう。
就活生から「オワハラ」といわれるような企業は、大学新卒者獲得競争の戦略転換が必要かも知れません。
就活生やその関係者から「悪質なオワハラ」と指弾された場合、その企業は刑法上の脅迫罪や強要罪に問われる可能性があります。
脅迫罪とは「生命、身体、自由、名誉または財産に対して、一般人を畏怖させることができる程度の害悪の告知をした」場合に成立する違法行為のこと。例えば、「内定を辞退して他企業に就職したら、損害賠償を請求する」といった類の、就活生に威圧感を与える非常識な言動です。
一方、強要罪とは「脅迫または暴行を用いて、他人に義務のないことを行わせた」場合に成立する違法行為のこと。例えば、窓のない狭い個室に連れ込んで内定辞退撤回を迫る、「内定辞退をするなら土下座して謝れ、謝罪文を書け」と迫るなどの非常識な言動です。
さらに、民法上の不法行為責任が問われるリスクもあります。例えば、就活生が「悪質なオワハラにより精神的苦痛を受けた」と訴えた場合は、その苦痛に対する損害賠償責任が成立する可能性があります。
そこまで発展しなくても、こんな違法行為の疑いをいったん掛けられたら、その企業が企業ブランド毀損を招くことは明白でしょう。今の時代、オワハラはこれだけ危険な言動である事実を、採用担当者は肝に銘じて業務に邁進する必要があるでしょう。
内定者を確保するため、採用担当者が良かれと思ってなした言動がオワハラになる場合があります。
そもそも、大学新卒者の採用業務において、内定者の数を揃えることがその目的ではありません。自社の経営理念や事業内容に共鳴した大学新卒者が入社し、働き甲斐を感じ、定着して戦力化し、人的資源の中核に育つのが大学新卒者採用の目的のはずです。オワハラはこの目的阻害要因にしかならないでしょう。
就職みらい研究所の「就職プロセス調査(2019年卒)」によると、
●ナビサイト(就職情報サイトの会員登録)を全てやめるように指示された
●最終面接において、その場で他社へ選考辞退の電話連絡をするよう求められた
●他の企業は受からないといわれた
●「この場で内定ですといったらあなたはどうしますか?」と、「就職活動を終えます」としか回答できないような形で回答を求められた
●内定承諾を検討する期間を極端に短く設定された
●内々定の承諾期間が5日間しかなく、延長もしてくれなかった
●2週間以内に決断してくれないと、他の学生に内々定を回すといわれた
などの言動が同調査の自由回答で挙がっています。
オワハラの典型です。強要の仕方は様々ですが、最終面接を終えた後に別室へ招き、「君には内定を出そうと思っているのだが」、「確か君は当社が第一志望だったよね?」などと切り出し、内定を条件にその場で就活終了を約束させるケースが多いようです。
いったん通知を出した面接時期を延期し、他企業との面接時期と重複した面接時期を再指定する行為です。これは他企業の面接選考を受けさせなくするのが目的といえます。
内定後、その就活生所属ゼミの指導教授へ「内定したので何月何日までに○○君の推薦状を発行して欲しい」と要請するケースです。主に指導教授との師弟関係が強い理系や体育会系の就活生が対象といわれています。この方法でオワハラをされると、就活生は「教授の顔を潰せない」と他社の就活を諦めざるを得ない境地に追い込まれるようです。
内定者を定期的に集め、人事担当役員と一緒に焼肉パーティー、寿司パーティーなどを開催する行為です。ソフトなやり方なのでオワハラと感じる就活生はほとんどいないといわれます。しかし雰囲気的に内定辞退ができない精神状態になるようです。
他企業の面接選考などを受ける時間をなくさせるのを目的に開催される研修です。中には短期語学留学を実施する企業もあるといわれています。
面接選考の時には温厚に見えた採用担当者が、内定辞退の電話をかけた途端に態度が豹変し「君は社会をなめているのか」、「一度出した内定は取り消せないものだ」などとまくしたてるような行為です。この中には、明らかな違法性が疑われる行為も含まれます。この行為により、就活生が精神的に追い詰められた事例もあるようです。
ハードなオワハラ、ソフトなオワハラ、先輩から引き継いだ採用業務で採用担当者が無意識に行っているオワハラ。オワハラには様々な形態があり、また、採用担当者のどの言動をオワハラと感じるのかも、就活生によって温度差や認識の差があります。
しかしいずれのケースでも、オワハラと騒がれる根底には採用担当者と就活生の信頼関係不在があるようです。
したがって、採用担当者は就活生に対し、マニュアル的な接し方ではなく、人間味のある誠実な接し方が求められています。自分の言動がオワハラと受け取られないためには、基本的に次の対応に留意すべきでしょう。
会社説明会や会社訪問は、就活生がその企業の社風をリアルに感じる初めての機会です。
その時に、応対する社員や会社説明をする社員の表情が暗い、態度が悪い、説明が会社案内パンフの域を出ないなどだった場合、就活生は白けるでしょう。そんな社風の企業に魅力は感じないでしょう。
内定辞退防止の最善策は、会社説明会や会社訪問に来た就活生に「この会社でぜひ働きたい」と思ってもらうこと。そのためにも、活発で風通しの良い社風は大学新卒者採用活動の前提となります。
面接選考で圧迫感を与える言動や横柄な言動は、就活生に不快感を与えます。今の時代、不快感を覚えた就活生はそれを直ちにSNSで発信するでしょう。就活生にとって、面接選考対応社員の不快感はそのまま当該企業のイメージになってしまいます。
新入社員として入社するまで、就活生と面接選考対応社員は対等の立場。すなわち自社のお客様です。お客様には誠意を込めて対応しましょう。
大学新卒者採用活動は就活生と企業の信頼関係があって初めて成立します。一方的な内定承諾取付けは、就活生の嫌悪感を誘うだけです。
したがって面接の最終選考を終えた就活生に、上司へ報告する必要があるなどの事情で内定承諾の意思を確かめたい場合は、信頼関係の確立を確認した上で「内定を承諾するか否かの返事はいつまでにもらえますか」と、これは率直に尋ねましょう。信頼関係が確立していれば、この一言で「あなたにぜひ入社して欲しい」との企業側の熱意が伝わるでしょう。
内定辞退の防止は、内定者フォローの重要事項です。しかし、それ以上に重要な内定者フォローは、内定者が入社式を待ち遠しく思えるような受け入れ姿勢と内定者への誠実な態度といえます。それがあって初めて内定辞退防止と入社後の定着に繋がる事実を、採用担当者は片時も忘れてはならないでしょう。
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