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長時間労働や残業代の未払いなどが、大きな社会問題となって久しい昨今です。日本のビジネスシーンは国際的に比べても「生産性が低い」といわれ、残業が当然の前提となっている職場もありますが、その一方で「みなし残業」の制度を導入しているところもあります。その長所と欠点にはどのようなものを挙げられるでしょうか。
目次【本記事の内容】
みなし残業とは、所定の労働時間を前提とした基本給に加えて、毎月一定時間の残業や休日出勤(時間外労働)があったものと事前にみなして、一定の残業代を最初から算定して給料に加える制度です。
おもに外回りの多い営業担当者など、タイムカードやPCのログイン履歴などで労働時間を管理することが難しく、自宅との直行直帰もある従業員に適用されることが多いです。
このみなし残業は、労働法の制度上は、例外に属します。
本来、労働基準法では、週5日勤務で週40時間労働を前提にし、それを超過した労働を企業に提供した場合には、対価として残業代や休日出勤手当(時間外手当)を受け取ることができるのです。この時間外手当は、通常の給与よりも25%以上の割増しで受け取る権利が労働者に保障されています。
よって、残業代は時間外労働の「対価」として支払わなければならないのが原則です。
ただし、みなし残業であれば、実際には所定の時間外労働を提供していなくても、固定残業代が毎月支払われるわけです。みなし残業を適用されている従業員だからといって、一定の残業を義務づけられているわけではありませんし、会社は残業を義務づけてはいけません。業務上の必要に応じて、残業命令をその都度出さなければならないのです。
たとえば、みなし残業を月10時間として設定されている職場であれば、仮にある月の残業が5時間しか無いのが実態であっても、時間外手当が10時間分支給されるのです。
みなし残業は、時間外手当が時間外労働の対価となっていないため、例外的な取り扱いとなります。しかし、しばしば雇用契約で不利な立場に置かれがちな労働者にとって、有利な条件であることから、法的に有効とされているのです。
ただし、会社がみなし残業を採用するには、従業員を保護する観点から、一定の条件を満たさなければなりません。
みなし残業に近いだけに、やや紛らわしい他の制度があります。ここで整理しておきましょう。
これも、労働時間を会社が管理しにくい外回りの営業スタッフにおいて採用されることが多い制度です。たとえ、外回りで8時間を超える時間働いていた日があったとしても、8時間労働としてみなすことができます。
つまり、残業があったとしても残業なしとみなすことができるので、会社側に有利に扱うことができる制度なのです。
ただし、みなし労働時間制では、外回りの営業スタッフが逐一、会社に始業と終業、あるいは経過報告を入れていた場合、必ずしも客観的に労働時間を管理しにくい事情が見いだしづらいとの理由で、事業場外みなし労働時間制を採用できないことがあります。
クリエイター系の職種(企画業務型)や研究職(専門業務型)など、労働時間の長短よりも成果が重視される場合、始業と終業の時間を固定せず、時間配分を労働者に任せる代わりに、給与はあらかじめ決められた額に固定されています。
※みなし労働時間制・裁量労働制ともに、残業代(時間外労働への手当)の概念が無いにすぎません。休日出勤や深夜労働をしたことが明らかな場合には、別途、割増し賃金や手当を会社は支払わなければなりません。
関連記事:人事じゃなくても知っておくべき「裁量労働制」とは? みなし残業とどう違う?
みなし労働時間制や裁量労働制では、従業員が自主的に労働時間を延ばした場合に「タダ働き」をしてしまったような感覚に陥ることがあります。
ただし、みなし残業の制度では、あらかじめ定められた残業時間に満たない残業しかしていない月があっても、定められた額の残業代が支払われますし、あらかじめ定められた残業時間を超えた残業、あるいは休日出勤をしている月があれば、会社はその超過分の手当を別途支払わなければなりません。
もし、「うちはみなし残業だから、残業代は一切付かない」という説明をし、実際に超過分の残業代の支払いを拒否している会社があるとしたら、それは違法な就業形態ですので注意してください。
よって、みなし残業には従業員にとって得することはあれど、損することは少ないメリットがあります。
また、会社側にとっても、残業が少なく繁忙期でない期間において、給与計算が楽にできるメリットもあります。
さらに、みなし残業制度のもとでは、ダラダラと職場に居残って残業することのメリットが少なくなるため、早く定時で切り上げたほうが時間を有効に活かせて得になります。よって、働き方改革を推進する原動力にもなりうるのです。
みなし残業が適用されている従業員にとって、損をする場面があるとすれば、残業があるとみなされた固定残業時間と同等かそれに近い時間外労働を実際に行った月があり、しかも、その中で深夜労働や休日出勤があった場合が唯一といえるかもしれません。
もともと、一般的な残業代は1.25倍の割増しをしなければならず、みなし残業代もあらかじめその割増しを行った上で毎月支払われています。
一方、深夜労働ではさらに1.25倍の特別割増しをしなければならず、休日出勤では1.35倍の特別割増しをしなければならないのが原則とされています。
ただ、みなし残業で固定残業代以内の時間外労働があり、もしその中に深夜労働や休日出勤が含まれていたとしても、これらの特別な割増しが適用されません。
また、会社の立場ですと、みなし残業で一定の残業代が毎月の固定費となりますので、適用する従業員を増やしすぎると、向上する収益に見合わない人件費の高騰に繋がるデメリットがありえます。
みなし残業の制度は、会社側が各従業員の労働時間を適正に把握・管理していないなど、運用をいい加減にしていると、知らず知らずのうちに未払い残業代が蓄積してしまうおそれがあります。
未払い残業代は、従業員側が請求しないでいると2年で時効にかかりますが、ある従業員が超過分残業代の未払いに不満を持っていると、未払いの証拠を着々と集めていたり、弁護士に法律相談をしていたりするものです。そして、従業員が退職するときに過去2年分の未払い残業代を一度に請求してくるなどの訴訟リスクも十分にありえます。もし、こうした従業員が複数いると、「働き方改革」が叫ばれて「ブラック企業」に厳しい目が向けられている世論から非難されかねず、会社の社会的な評判も落としかねません。
よって、みなし残業制度を導入する際には、固定残業代の範囲内に毎月収まっているものと思い込まず、従来以上にそれぞれの従業員について労働時間の適正な把握に努めるようにしましょう。
みなし残業は、残業が比較的少ない会社では事実上の賃上げでもあり、従業員にとってメリットの大きな制度だといえるでしょう。しかし、会社にとっては人件費の高騰に繋がります。みなし残業を導入した分、従業員は各自の仕事の生産性を上げる努力をし、会社の収益性を向上させる貢献を続けなければ、みなし残業を長く維持することはできないかもしれません。
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